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一人の人間では不可能なドアのノックスピード

この記事の所要時間: 220

小学校4年くらいの頃の出来事です。

その日、父は出張、母は近所のお通夜だったか何かに出かけていて、高校生の姉と二人きりで留守番していました。

うちのリビングは、玄関に近い側とキッチンに近い側と二つドアがあって、その二つのドアはコの字型の廊下でつながっています。

姉が入浴中、リビングで一人テレビを観ていると、玄関側のドアがノックされました。

私は母が帰ってきたと思い、嬉々としてドアを開けましたが誰も居ません。

気のせいかと思っていると、一分程して今度はキッチン側のドアがノックされました。

開けても、やっぱり誰も居ません。姉がふざけてるのかと思ってドアの裏や廊下の先を確認しても、人の姿はありません。

それどころか、お風呂の方から確実に水音がしています。

さすがにちょっと怖くなり、クッションに埋もれて必死にテレビに集中しました。

すると、数分後に再び玄関側のドアがノックされました…。

 

私はもう怖くて怖くて、ドアを開ける事ができませんでした。

その場にじっとしていると、またもや一分程して今度はキッチン側のドアがノックされました。

泣きそうになるのを堪えていると、次は一分も空けずに玄関側のドアがノック!

そして、一人の人間がやっているのだったらありえ無い間隔で、10秒も挟まずにキッチン側のドアがノックされたのです!

その直後、ドンドン…ドンドン…ドンドン、と玄関、キッチン、玄関…と数秒毎にノックの応酬!

子どもだった私は、もうただパニックおこして泣き喚きました。

私の泣き声に反応したかのようにノックが止み、私は一目散にリビングを出て姉のいる風呂へと走りました。

姉はシャンプー中で泡だらけ。姉のイタズラの可能性は確実に消えました。

 

裸の姉は、泣きじゃくる私に非情にも
「何?やだ、出てってよ~」
と冷たい言葉を言い放ちました。

(ねーちゃん……)

私は、リビングに戻るのも怖かったので脱衣所でガタガタ震えていると、車の音が聞こえてきました。

今度こそ、母親が帰ってきたのです。

私は必死に玄関まで走り、母の胸に飛び込んで一部始終を泣きながら語りました。

すると…この時の母の何とも言えない表情は今も忘れられないんですが、
「それはね、お母さんがあんたを驚かそうとしてイタズラしたの。ごめんね。」
と、なぜかやたらと優しい口調で母は言いました。

子ども心に
「嘘だ!お母さん何か隠してる」
と感じれる、張り詰めた空気が漂っていました…。

 

母は何か知っていたのでしょうか?十五年程経った今、勇気を出して聞いてみたい気もするのですが…。

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