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夜に鬱蒼とした森の中を抜ける南ルートで黒い何かに肩を掴まれてゾッとしたリアルホラー体験

 2015.08.23     恐怖体験談     コメントを書く     Loadingお気に入りに追加
この記事の所要時間: 548

おうちに無事帰るまでが一日のお仕事。

実家から学校までは自転車で2、30分かかった。

バス等の交通手段もあったが、あまり親に負担をかけたくなかったから、余程の理由が無い限り自転車で通学してた。

田舎なので、学校までのルートは東西に流れる川を挟んで、南北二つのルートに絞られていた。

一つは川の北側、国道(県道?)を通るルート。

夜でも交通量は多く、一部を除いて民家や店が途切れる事もない。

もう一方は川の南側、国道とは反対に民家が密集している箇所が一部だけで、あとは田園と、鬱蒼とした森の中を抜ける山に面したルートだった。

夜になると、歩いてる人や自転車の人など皆無で、車一台とすれ違っても珍しい、と思うレベルの交通量。

街灯一つなく、余りに暗いので幽霊が出るだの何だの言うヤツもいた。

だから皆恐がって、陽が落ちてからそこを通る学生はいなかった。

でも俺は、幼い頃からその森を親父とサイクリングしていて慣れていたし、森の中をライトを消して月明かりだけを頼りに、川の音を聞きながらのんびり帰るのが好きだった。

太い木の逞しい枝が折り重なってアーチを作ってる所もあって、ちょっとだけ幻想的な感じがして俺はとても気に入っていた。

 

 

その日も部活が終わり、いつものたまり場で、
「台風が近づいてるけど、明日は休みにならないかな」
等と、友達と下らない話をしながらダラダラしているとアっと言う間に九時を過ぎた。

生暖かい風も強くなって来たので、解散する事にした。

 

俺は、いつも通り森のルートを選んだのだが空は雲が低くたちこめていて、集落を抜けた辺りで本当に何も見えなくなった。

さすがにライトを点けようと思い、足で操作したが(自家発電のタイプね)、電球が切れているのか反応がない。

引き返そうかとも思ったが、めんどくさいし雨が降る前に帰りたかったからそのまま進んだ。

暗いのは暗いのだが視界ゼロというわけではなく、眼が慣れてくると辺りをボンヤリと把握する事が出来た。

大丈夫だ、と思い地面に視線を落としていつもの調子で田園を抜けた。

森の入り口まで来た時にどうもいつもと感じが違う気がした。
が、今まで怖い目にあった事もないし、気のせいだと自分に言い聞かせ、森に入った。

 

向かい風が強くなって来てペダルが重くなったが、頑張って漕いだ。

少し進むと、風に混じって嫌な匂いがした。

ウエっ!とか思いながら何の匂いだろう?と、考えた時、前方の闇の中に、ボウッと黒い何かの輪郭が浮かびあがるのが見えた気がした。

「えっ?」
と思った次の瞬間、何かに左肩を思いっきり掴まれた。

今までその森を怖いと思った事は一度もないが、その時ばかりは
「ヒッ!」
っと声にならない声をあげて、全力でペダルを漕いだ。

 

『ついに俺も心霊体験をしてしまった。ついて来られたらどうしよう』
などと、異常なほどパニくりながら自転車を漕いだ。

相変わらず視界は無いに等しいが、構ってられなかった。

道は真っすぐだし充分な幅があったが、どうにも背後がうすら寒くてしょうがない。後ろに誰か乗ってる気がする。

しかし、振り返って確かめる事も出来なかった。なぜか、必死に飼い犬の名前を叫びながら猛ダッシュした。

 

森を抜け、やっと民家の明かりが見え始めると少し安心出来た。

しかし、まだ振り返って確認する勇気はない。

北側ルートと南側ルートの合流点になる、大きな橋の袂のコンビニの前に来て初めて振り返ってみた。

…誰も後ろに乗ってないし、ついてきてもいなかった。

ホッと胸を撫で下ろし、コンビニに入った。

店員さんの
「いらっしゃいませ」
という挨拶がこの時程嬉しいと思った事はない。

雑誌コーナーに友人カップルがいた。

俺の顔を見て
「顔が真っ白で変」
と笑ってくれたので、俺も笑い返す余裕が出てきた。が…

 

「肩、汚れてるよ」
と指摘され、一気に血の気がひくのがわかった。

バッと左肩を見ると、少量の泥のような物がついていた。

即座にカッターシャツを拭ぐと、外のごみ箱に叩き込んだ。

「何やってんの!?」
と突っ込まれたが、引きつった笑顔でごまかして家に逃げ帰った。

母ちゃんにシャツはどうしたの?と聞かれたが、学校に忘れて来たとしか言えなかった。

 

フロに入り、ご飯を食べると人心地つけた。

…よくよく考えてみれば、強風で何かが飛んで来て当たっただけかも知れない。

そう思うと、そうとしか考えられなくなり、急に恥ずかしくなった。

しかし、やはり若干怖いので、普段は姉と寝ている犬を自分の部屋に連れ込んで一緒に寝た。

 

 

翌朝。

残念ながら台風の直撃はならず、雨は降っていたが学校は休校にはならなかった。

犬がいてくれたおかげで安心して寝る事が出来たし、目が覚めると昨日の事は気のせいだと思えるようになった。

朝メシを食べて、いつものように傘をさして自転車に乗って家を出た。

朝は普通に南ルートから通学してる人も多いから、俺も南から行こうかと思ったが、やはりまだ少し気になるので無難に北ルートの国道から行く事にした。

途中、北側から川を挟んだ南側を伺えるポイントがあるのだが、そこから森の方を見た。

いつもと変わらない、鬱蒼と茂った森と田園が見えた。

 

変わらなく見えただけだった。

 

その日の昼休みには、うちのクラスまで話は伝わって来た。

俺の1コ下の奴の兄貴(以下、オニーサン)が、新聞配達をしていた時に見つけてしまったらしい。

オニーサンの受け持ちは、俺の実家のある地域(A)から南ルートの森を抜けた小さな集落(B)。

さらに、そこを抜けた町中の一部までだったそうだ。

オニーサンは、いつものようにカブで(A)を配り終え、(B)に向かって森を抜けようとした時に見つけてしまった。

大木の枝で首を吊っている自殺体だった。

オニーサンは、すぐに警察と自分の家に知らせた。恐らく、午前五時半過ぎくらいに発見したのではないだろうか。

自殺したのが誰で、いつからそこにぶら下がっていたかは後で知る事になるのだが、正確な場所まではあえて聞かない事にした。

 

ありえない話だが、もし、あの時俺が左肩を掴まれたと思ったのは、掴まれたのではなく、自殺体の…足だとしたら…

もし、ライトが点いていて、俺が発見する事になっていたら…

そう考えると、今でもゾッとする。あれから数年経つが、あれ以来南ルートは通ってない。

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