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曰く付きの赤子火鉢を安値で買った質屋

信楽焼火鉢
この記事の所要時間: 39

うちの家は昔質屋だった・・・と言っても、じいちゃんが17歳の頃までだから私は話でしか知らないのだけど、結構面白い話を聞けた。

「赤子火鉢」

喜一じいちゃんが学校から帰ると、店にうす汚い火鉢が置いてあった。

(客が売りに置いて行ったのかな?)

マジマジ見ていると
「そいつは、価値のある物なんだ。さわんじゃねーぞ」

おやじが奥から出て来た。

「えっ!?コレがぁ?」
と眉を潜めると

おやじは
「曰く付きなんだよ」
と得意げに言う。

喜一は慌てて火鉢から離れた。

曰く付きの物はウチは確かに多いが、いったい誰がそんな物を買うのかと聞くと
「世の中変わった物を欲しがる悪趣味金持ちがいっぺぇいるんだよ、そういった顧客は大事にしねぇとな…」
と笑っていた。

 

 

曰くというのは、こんな話だった。

早くに事故で夫や家族を亡くした老婆は、息子を異常に溺愛していた。

そんな家へ嫁が入り、嫁姑戦争が始まった。

息子も頭を抱えていたが、1年もすると姑が病で倒れ、また1年後には嫁の看病空しく亡くなってしまった。

悲しみに暮れた息子は、母を溺愛していたがため奇行走り、妻に3食毎日母のお骨を盛ったのだ。

息子は、お骨を食べた人が妊娠すると、お骨の主が宿ると言う言い伝えを信じていた。

 

何も知らない妻は、子に恵まれ喜び、元気な女の子を産んだ。

息子と嫁は大事に育てたが奇病に掛り、日に日に赤子は痩せて萎れて行った。

嫁の看病空しく赤子は1年でまるで小さな老婆の様な姿になり、ある日突然
「この女があたしを殺したんだよ」
と声を上げた。

嫁は大声で叫び、人殺しと罵る我が子を火鉢へ突っ込んだ。

ところが、赤子は嫁の袖をしっかりと掴んで離さず、嫁にまで火が回って来たのだ。

嫁は助けてと叫んだが、嫁を信じられなかった夫は家から走り去ってしまった。

 

気がつけば、全てが燃えてしまった後。

残ったのは、この火鉢だけだった…。

「毋が大事にしていた火鉢なので形見にと思ったのですが、毎夜毎夜火鉢からあの赤子がひょっこり顔を出すんです。私の名を呼びながら…」
と男は言った。

寺では無くウチへ持って来たのは、火事の後で少しでも金が必要なのだろう。足下を見ておやじは安値で買った。

 

「でも、そんな呪われた火鉢なんか売って、客が呪われちゃったらどーすんだよ」
と喜一が聞くと

「俺だってプロだ。何か憑いてりゃ払って売るさ、客が死んじまったら食ってけねぇからな!それにこの火鉢は呪われてなんかいねーよ。見た所タダの火鉢だ、化けて出て来る何て男の後悔と罪悪感が紡いだ幻だろうよ。呪われてるとすりゃぁ…」

 

それから数日後。

新聞に『奇声を上げ火事の中へ男が飛込み死亡』という記事が載った…

おやじは、パラパラと店の帳簿(売買いした客の名前、住所を記した物)を見ると、ニヤっと笑い
「店番頼む」
と言うと、新聞と火鉢を片手に上等な下駄に履き替え出かけて行った。

 

きっと今日はごちそうだ、喜一が始めて複雑な気持ちと言う物を味わった話。

赤子火鉢の意味

赤子火鉢を質屋に持ち込んだ例の男。

その男が、呪いなのかなんなのか分からないが、気が触れてしまい、奇声を上げて火事の中へ飛込み死亡した。

おやじが新聞と火鉢を片手に出掛けて行ったのは、正真正銘の呪われた火鉢として何処ぞの金持ちにでも売り込みに行ったのだろう。

画像出典元:信楽焼火鉢 – item.rakuten.co.jp

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