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盆入りになるとあの世の子供たちが見える川辺の消防学校

 2015.10.06     恐怖体験談     コメントを書く     Loadingお気に入りに追加
この記事の所要時間: 320

もうずいぶん昔の話。消防学校に入学して、半年って頃。

うちの県の消防学校は川辺にあって、台風のときはよく溢れたりした。

今でこそ、水門も完成して人通りの多い道に面してるけど、その頃は空いた土地をたまたま使った、みたいな凄い辺鄙な場所で、夜には街頭なんかほとんどない場所だった。

水難事故もかなり多かったらしくて「ここはあぶない!」みたいな絵の看板が何十と立ってる不気味なところだった。

 

消防学校って完全寄宿舎制で、基本的には寮生活なんだけど夏休みはみんな大体帰省する。

でも、幾人かは
「訓練したい」
とか

「面倒だ」
って理由で寮に残ってて、自分もその一人だった。

 

 

8月も半ばの暑い夜に、寮にはクーラーなんかないから外で涼むんだけど、訓練棟やら車庫やらに川の音が響いて不気味だった。

残った寮生同士で懸垂勝負だロープ登り勝負だ、って馬鹿なことを夜中の2時3時の涼しくなる時分までやってたら、学校の門の前を明かりが通っていく。

最初はちらほらだったんだけど、気にしてから眺めてると10か20は通ってた。

この辺には川しかないけれど、夏休みだし高校生が自転車でうろついてるんだろう、くらいに思ってた。

でも、ちょうどその日は台風が通過したあとで、川が荒れてたから
「なぁ、水防団の集まりでもあるんじゃねぇか?」
って話になって、

当時は、自分も無駄に熱血なのが消防士の卵だったから
「なんか手伝いでもいこうぜ」
ってことになった。

 

門を出ると、学校の塀がずっと続いてて塀がとぎれたところが川辺へ降りる道、って感じだった。

明かりの行った先は川に降りる道しかないから、と訓練服(ジャージみたいの)に着替えて走っていったんだけど、明かりは見えてこない。

「川辺まで降りてみるか」
と伸びた草かき分けて降りていったら・・・

20か30人の子供が、対岸の川辺でぼーっと立ってるの。

みんな白いシャツに短パン、坊主みたいな格好で、中には手に網もってたり。

で、4人か5人の俺たちを気にすることもなく、ぼーっと立ってる。

時間は3時とっくに回ってて、子供がいるわけないし、どう見ても「普通」の子供じゃなかった。

 

「お前ら、遅いから帰れ!」
って一人が叫んでみたんだけど、誰もこっち見ない。

「これはおかしい」
ってことで、すぐに向こう側に渡ろうとするんだけど橋が無い。

「こっから4,500m先に橋あったよな?」
って言って、急いで対岸に行った時にはもう誰もいなくて・・・

さざざざ、って川の音が反響してるだけだった。

 

流石に怖くなって、帰り道は誰も何も言わなかったんだけど。

消防学校の門の明かりが見えたときに、ひとりがぼそ、って。

「なぁ、今日って8月の何日だ?」

「12日だろう。あ、日付変わったから13日だ」

「じゃ、旧盆じゃないか」

そのあとは恐ろしくて、食堂で男5人、念仏のようなものを唱えて朝まで過ごしていました。

 

 

8月13日、月遅れの盆入り。

ちょうどそんな日に、川辺に立っていた沢山の子供たち。

今でも、あの正気のない顔は頭から離れません。

朝になってやってきた教官にそのことを話したところ
「あぁ、お前らも見たのか」
と笑ってから、こう付け加えました。

「あの子供の数増やしたくなきゃ、水難救助(訓練)、ちゃんとやっておけよ」
と。

 

今やコンクリートで護岸された川岸で、明るいあの場所に今も彼らが立っているかはわかりません。

ですが、時々、消防学校に教えに行くときはこの話をして見せます。

今思えば、消防学校の学生だからこそ、彼らが見えたのかもしれません。

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