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あなたのめがねとったほうがいいと言ってきた真意

メガネ
この記事の所要時間: 917

真那子さんは、去年、念願の志望大学へ入学を果たした。

高校時代は中高一貫の女子高で、校則は厳しく「他校男子学生との交際は一切禁止」だった。

真那子さんの高校は、小高い丘の急な斜面を登ったところに建っており、そのふもとには大学があった。

 

廊下の窓から、ちょうど大学生達が優雅にキャンパスライフを送っている姿が見下ろせる。

立地環境もあり、学生の中には密かに大学生と交際をしていた者もいた。

真那子さんも誰かと付き合いたいと胸を焦がすことはあったが、そこまでする度胸はなかった。

 

校則を破った学生の大半は、学校内で隠し切れず、結局は噂が広まるか誰かにチクられるかしてバレてしまう。

罰則は大したことないのだが、その後が大変になる。

周りからの妬むような、冷たい視線を浴びながら高校生活を過ごすのだ。

 

そんな校風なので、女子学生同士の交際が少なからず存在した…

彼女も、一度告白されたことがあった。

 

彼女は普段は黒ブチのメガネをしているのだが、ある日同じ吹奏楽部の先輩からこう言われた。

「あなたのめがね、とったほうが綺麗よ。」

はじめは単なるお世辞だと思っていた。

 

「でも、コンタクトはめんどうだから…」

「ううん。絶対、とったほうがいいわ。」

その先輩というのは彼女よりニ学年上で、ちょっと眩しいような笑顔が印象的なひとだった。特に、その瞳で見つめられると、なぜだか吸い込まれる。

 

 

ある日の部活が終わった音楽室で、彼女は告白された。

「…ごめんなさい。先輩のことは好きだけれど…私…」

 

長い沈黙のあと、
「…そう…。あたしも、突然でごめんね。」

消え入りそうな声で、先輩はつぶやいた。その吸い込まれそうな瞳は真っ直ぐこちらを見つめていたが、涙のせいでやけに黒ずんでみえた。

 

最後に先輩はこう付け加えた。

「あなたの瞳がね、好きだったの。めがね、とったほうがいいわ。」

 

先輩は、眩しそうな笑顔をつくって微笑んだ。

その表情が、なんだか、とても胸をドキドキさせた。

 

そのまま時は過ぎ、先輩の学年は卒業の年となった。

先輩は他県の医療系大学へ進学していった。夢は看護士だったそうだ。

 

 

真那子さんもその翌年、都内の志望校へ合格を果たした。

大学に入ると、服装や髪型からの束縛から解放され、見た目もだいぶ変わる。

ご多分にもれず、真那子さんも髪を染め、オシャレをして、いわゆる大学デビューを果たした。

しかし、メガネの色は変えても、メガネを外すことはなかった。

 

「コンタクトがめんどくさいから」
が理由というのもあるけれど、なんだか視界の四隅に縁取りがないと落ち着かない。

 

もともと人付き合いが上手いほうではなかったので、メガネをかけることでなんとなく人前でも安心できた。

外界と瞳との間に一枚のガラスレンズを隔てることで、安心するのかもしれない。

そんな真那子さんにも、今年に入って彼氏ができた。

 

彼氏は短大に通う大学生で、細身の体系で、顔立ちは整っていて両性的な雰囲気がある。

とても優しいし、何より彼の笑顔と、吸い込まれるような瞳が好きだった。

中学、高校と女子だけの生活で、もちろん生まれてはじめての彼氏だった。

はじめは緊張してぎこちなかったが、彼がリードしてくれたし、デートも毎回楽しく過ごせた。

 

彼は酒好きで、毎回デートの帰りには二人で居酒屋へ寄る。

今回のデートも帰りがけに居酒屋へ寄り、楽しく談笑しながら二人ともほろ酔い気分になった。

そのとき、彼が切り出した。

 

「めがね、とったほうが綺麗だよ。」

「えー、そんなことないよ。私はメガネしてるほうが好きなの。」

「なんだよー、そのほうが絶対いいのに。」

「前にもそんなこと言われたけどね、私はメガネでいーの。」

「ちぇー」

そんな他愛も無い話をしていると、突然

 

「今日さ、ホテル泊まろうか?」

彼からその言葉を聞いたとき、内心少し嬉しかった。この人となら…

「え、…うん」

 

ホテルへ行くということは…想像して胸がドキドキした。

それをごまかすように、私にもついにこの日が来たのだ。

そう思うと、いつにも増して飲んでしまい、酔いつぶれてしまった。

 

気が付くとホテルの小部屋にいた。

「気が付いた?」

「…?う~~~~ん…?」

 

まだ酔いが覚めてなくて、頭がくらくらする。天井と床がぐるぐる回ってるようだ。

彼は一糸まとわぬ姿だった。

「気が、付いた?」

彼女はそれを見て何か妙な気分がした。しかし、すぐに睡魔が襲ってきて眠りに落ちてしまった。

 

 

「真那子さん」

「う…ん?」

「真那子さん、聞こえますか?起きてください。」

彼女は呼ばれる声で目を覚ました。

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