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四国のとある集落で受け継がれるハカソヤという女性を護る習慣

ハカソヤ
この記事の所要時間: 833

ほんの数年前に知った私の母の故郷(四国のド田舎)の習慣の話です。

うちの集落には、ハカソヤという女限定の変な習慣があります。

ハカソヤにも色々あって、大きく分けてお祝いの言葉に使う場合とお守りのことを指す場合があります。

お祝いの言葉のほうは、例えば初潮が来た女の子や恋人が出来た未婚の女性に
「おめでとう」
の代わりに言ったりします。

 

お守りのハカソヤは、母親から一人前になった娘に手渡す安産のお守りのことを言います。

例えば、娘が就職して実家を出て遠方に行くときなんかは必ず持たせます。

この場合、何をもって一人前とするのかは割といい加減で・・・家によっては初潮と同時だったり、就職やお嫁入りの時だったりとバラバラなのですが、とにかく安産のお守りなのは共通しています。

(妊娠していてもいなくても。ていうか、してない場合がほとんど)

 

両方に共通しているのは、
「必ず男性が見ていない、聞いていないところで」
と言うことです。

とにかく女性限定の習慣なので、男性もいる席でおめでたいことが判明したりしたら、台所とかに呼んでこっそり
「ハカソヤ、ハカソヤ」
と言ったり、お守りを渡す時は男の子のお守りをほかの女性に頼んで・・・といった感じです。

とにかく男性には、ハカソヤは徹底的に隠されます。

(多分、集落の男の人はハカソヤの存在自体知らない人がほとんど)

 

私も都内の大学に進学して、一人暮らしをはじめるという時に叔母からハカソヤをもらいました。

貰ったのが母ではなく叔母からなのは、うちの母親はあまり迷信などに関して信心深いほうではなく、こういった古いしきたりも嫌っていたからです。

母も祖母からハカソヤは貰っていたようですが、私にはハカソヤはあげずに自分の代で途切れさせるつもりだったようです。

(実際、こういう習慣があるのを嫌って母は集落を出ています。妹である叔母は、お嫁入りも近所で済ませて祖母と一緒に集落に残っています)

ただ、それではあんまりおばあちゃんがかわいそうだから、それに都会は怖いところだから、女の子には絶対いるものだからと言われたので
(あとでここまで叔母が言う理由を知ってぞっとしましたが)
根負けして受け取った感じでした。

 

私が貰ったハカソヤは、見た目はどこにでもあるような安産のお守りです。

ちなみに、ピンク色。

 

 

東京に出て一ヶ月目。

情けない話なのですが、今まで住んでいた町に比べて遥かに華やかな東京の雰囲気にすっかり酔ってしまった私。

大好きなカフェ巡りや雑貨屋通い、美味しいお店探しなどしているうちに、あっという間にお金がなくなってしまい、ジリ貧に陥っていました・・・。

(なにせ今までいた街は、母の故郷の集落ほどではないにせよ寂れた町でスタバ?バーミヤン?何それ?な感じでしたもので・・・)

バイトはまだ見つからないし、かといって一ヶ月目からお金を無心するのもどうかなと思い、家中で余ってるお金はないか探しまくったのですが見つからず。

 

そこでふと思い立ったのは、お守りの存在でした。

昔の話によくあるベタなアレですが、お守りの中にお金を入れておいて困った時にお使いなさい、みたいな気遣いの仕方がありますよね。

ひょっとしたら、あのハカソヤの中にお金が入ってたりとか?などと甘っちょろい期待を抱いてハカソヤを開けてみたんです。

 

ところが、中にはお金など入っていませんでした。

入っていたのは形付けの厚紙と、小さい古びた布キレだけ。

二~三センチほどの、目の洗い木綿かガーゼのような布で、その半分ほどが茶色い染みで染まってて、乾いて固まってベコベコと波打っている。

ずいぶんと古い布のようで、地の部分も黄ばんでいました。

 

一体、これは何なんだろう?私は妙な方向に思考をめぐらせていました。

生理の時に汚れたショーツを放置しとくと、こんな固まり方するんだよね・・・。

布が変な並打ち方して固まって・・・

てことは、これ・・・血・・・?

でも、一人前のはなむけのお守りに、なんで血のついた布切れなんか?

 

時間が経つにつれて気になってしょうがなくなってしまい、とうとうお金の無心の電話にかこつけて、母に聞いてみることにしました。

母は私がハカソヤを叔母から貰っていたことすら知らなかったらしく、驚いた様子でした。

「あの布は何なの?」
と聞いてみましたが、

母はただ静かな声で
「酷いことが起こらないよう気をつけてね」
と言うだけです。

結局、何も教えてくれませんでした。

 

 

どうしても気になったので、今度は叔母に電話してみました。

久々に話した挨拶もそこそこに、私はまくし立てました。

「あれは何なの?あの布は、あの染みは」

叔母は、あれ、知らなかったっけと言う風に、さらりと言いました。

 

「何って、血よ。女の子の。ハカソヤは男にひどいことされないためのお守りだって、○○ちゃんは姉さんから教わらなかったの?」

 

一瞬、何を言われたのか分かりませんでした。

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