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戸を閉めてはいけない「閉めずの扉」

この記事の所要時間: 158

開かずじゃないんだけど、閉めちゃいけない扉ってのは?

おばさんの実家が古い仕出し屋で、弟が生まれるんでひと月くらい一人で預けられたことがある。

店は大人ばかりで忙しそうで、敷地の中の探検ばかりしてた。

表が店と母屋で、裏に厨房と蔵と、昔は使用人の部屋で今は倉庫になってる離れがあった。

その離れの隅っこに物置があって、すりガラスの引き戸が必ず少し開いていて、中に皿とかお椀とかがあるのが隙間から見えた。

入ろうしたこともあるんだけど、見た目より重い戸で開けるも閉めるも出来なかった。

 

そのうち、板前のにいちゃんと仲良くなった。

それで、気になっていた物置の戸の事を聞いたら
「閉めるとお化けがでるんだよ」
と言われて、子供心に嘘だろーと思っていた。

別にその後は大したことも無く過ごして家に帰った。

 

 

何年かしてから、その店が廃業したとおばから聞いた時にその話をしたら、詳しいことを教えてくれた。

昔、その仕出し屋は、婚礼なんかのときにはその家に行って料理してくる方式で商売していたそうだ。

そして、戦後くらいにそうやって料理しに行った板前が花嫁とできちゃったらしい。

結局、店の当主にばれて女の家にも知れて、二人ともその道具のしまってある「支度部屋」で心中した。

その後、片付けようとして部屋に入ると変な音を聞いたり、女を見たり、具合が悪くなるヤツが続出して片付けも出来ず、取り壊そうとすると店の当主が倒れたりして、どうにも出来ないままになってた。

しかも、戸を閉めるとすりガラスにぶら下がってる影が映るので閉めることも出来ず。

結局、戸に釘を打って隙間が空いたまま動かないようにした。

 

俺が預けられてから数年して、店で修行していたおばの従兄弟に代替わりしたんだが、裏に新しい厨房を作るのでその離れを壊したところ、

従兄が急に倒れて一ヶ月ほどで亡くなり、店も続けられず廃業になった。

結局、土地も全部更地になって人手に渡ったんだそうだ。

その従兄ってのが、俺が仲良くしてもらった兄ちゃんだった。

俺は知らなかったんだが、両親は葬式に出たらしい。

話を聞いたときはすごいショックだった・・・

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