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投身自殺があった橋に現れた女の頭部

 2015.11.03     恐怖体験談     コメントを書く     Loadingお気に入りに追加
この記事の所要時間: 1140

高校生時代、陸上部で短距離走をやっていた俺は、夜学校が閉まってからも練習をする熱心なスポーツマンであった。

といっても、学校内に残って練習するわけではなく、自宅周辺の道路を走るのである。

中でも練習に好都合な場所は、100メートル程の長さのある橋の歩道であった。

住宅地では不可能な100メートルダッシュの練習が、思いっきりできたのだ。だが、その橋には縁起の悪い問題があった。

 

自殺である。

 

河を渡るために30メートル程の高さがあるその橋は、街灯も少なく、投身自殺者にとっても絶好のポイントだったのである。

実際、飛び降りポイントらしき橋の中間点には、花が添えられていることが多かった。

投身自殺者があの世へ向かう速度よりも速く突っ走ることに情熱を注いでいた当時の俺は、そんなことはお構いなしに橋を練習に使っていた。

むしろ、自殺が起こらないようパトロールしてやる!くらいの意気込みであった。

 

 

ところがある日、奇妙な光景に出くわした。

白いワンピースを着た少女が、夜の橋の歩道を疾走していたのである。

(ユーレイ!?…でも、脚あるし…)

俺が訝しげに遠くから眺めていると、少女が走り終わった先に数人の人影が見えた。

四角い機材を担いだ者、槍のような棒をかざした者、照明を持った者…

(あぁ!!映画か何かの撮影か!)

学生らしき団体の、映画製作現場だった。

しかし、そいつらの行動が眉唾モノであった。

「あれ、ジャマだよね!」

「でも触ったらヤバいって!」

「いーからwポイしちゃお♪」

そんな旨のことを話してたと思う。メンバーの一人が橋の中間点に歩み寄り、何かを拾い上げたかと思うと、河へと投げ捨てた。

(オイオイ、あの場所って!)

辺りが妙な静寂に包まれる…

 

年上のグループに文句つける勇気もなかった俺は、彼らが立ち去った後、橋の中間点に行ってみた。

案の定、昨日まであった花が無い、花瓶ごと…。

(何てことしやがったんだ奴等は…!)

色々な意味で、愕然とした。

 

 

翌日、俺は日頃からのショバ代的な意味合いも含めて、捨てられた花の代わりに適当な野花でも置いてやろうと考え、橋へ向かった。

「何じゃこりゃっ!!?」

橋に到着した瞬間、思わず声に出した。

紫の夕暮れ色に染まった橋の歩道、いつも花が添えられている場所、その場所に大量の花束が添えられていた。

イヤ、山盛りに積み上げられていたといった方が正しい表現であろう。大型ゴミ袋2杯分くらいの量だった。

おまけに、どの花束も茶色くカラッカラに枯れ果てていたが、それを束ねている真っ白な包み紙がやけに真新しく、不気味に俺の目に映った。

明らかにドライフラワーなどという爽やかな類のモノではない…

(昨夜花が捨てられ、憤怒した遺族の異常行為であろうか?)

何にしろ恐ろしくなった俺は、集めてきた野花だけはさっとその場に置き、そそくさとその場を離れた。

しばらく歩き、遠目に橋を振り返る。

その時、異様なモノが目につく。

 

(…人の…手?)

 

橋の欄干の隙間から、橋の歩道に向かって、何か白っぽい棒状のモノが伸びている。

もしあれが人の腕だとしたら、橋の外側にぶら下がって掴まり、歩道に向かって手を伸ばし這い上がろうとしている状態である。

自殺未遂の人?…イヤ、アレは人じゃない…!直感であった。

そう思って身構えつつ、目を凝らした次の瞬間…

 

「うぬぅ…おぉ~ん…」

 

気だるそうな女の声が響き、水にまみれて海草のようになった長髪が、
べったん!!
と音を立て、欄干の隙間から歩道にはみ出てきた。

(頭も…上がってきている…顔が…見える!!)

目を逸らそうとした矢先の、一瞬だった。

今度は、長髪に覆われた青白い人間の頭部のようなモノがにゅっとはみ出てきて、俺の置いた野花を手に掴んでがつがつと口に含み、

 

ずりゅり!!

 

手・髪・頭ごと、橋の裏側へ引き摺られるように一気に引っ込んでいった。

欄干の隙間は、どうやっても人間の頭部が抜けられない幅である。

その隙間を、青白い頭部が変形しながらすり抜けていた…

次の瞬間、俺は校内最速記録を確実に更新する勢いで、自宅まで突っ走った!(ヤベー、マジ脚力鍛えといて正解だったわ~!!)

 

 

翌朝、母親から
「あの橋にはもう行くな」
と言われた。

母ちゃん霊感持ちか?と意外に思いつつ、理由を訊くと…

「あの橋の近所の○○さんがね、昨夜橋の上で何かが燃えてるのを見たんだって。放火魔みたいなアタマのおかしい人の仕業かもしれないから、もう一人で行くのやめなさい。」

(その燃えていた「何か」って…)

俺は昨日見かけた枯れた花束のことを母親に話した。

(流石にバケモンのことは言わないでおいた…)

「じゃあその花束が燃えてた…?でもそれだと話がおかしくなるんだよね…」

母親が付近住民の話を整理した限りでは、炎は昨夜数時間にわたって橋の上で燃え続けているのが目撃されていたそうだ。

枯れた花がそんなに長時間燃え続けるものだろうか?

 

疑問に思った俺は、その日の学校帰りに、もう一度橋まで行ってみることにした。

流石に一人では恐くて無理だ。

部活仲間を一人巻き添えにして、通学用の自転車を二人乗りして現場へ向かった。

橋に到着。時間帯は前日来た時とほぼ同じで、辺りは薄暗い…

「おっ、おい!あんまそれ以上進むな!」

運転する友人に呼びかけ、橋の中間点から20メートル程離れた所で、自転車を止めさせる。いきなり接近するのは危険だ。

「ハイハイ、言われなくたって、俺こんな自殺スポット来たくねぇよ…」

元来ビビリ屋の友人である。

「わるいねwでさ、あそこの辺で何かが燃えてたんだと思う。何か見える?」

ポイントを指差す俺。薄暗い闇に目を凝らす友人と俺。

 

いつの間にか風が吹き始めた。

「あの中間点?…モロに何か落ちてんじゃん!うわっ、キモッ!何、あの白いの!?」

雑誌くらいの大きさの、白い紙だろうか、橋の歩道に沿って何枚も並べて置かれているようだ…

不思議である。風に吹かれてはためいているのに、その場にとどまって飛ばされない紙の列。

思わず歩み寄っていく俺と友人。

(…真っ白な…紙…?)

昨日見た、花束の包み紙の残骸のようにも見える。

 

紙から数メートルも位置まで近寄ると、紙が飛ばされずにいる理由がわかった。

紙が釘で打ち付けてあった。歩道の地面に。

地味に異様な光景…俺と友人、愕然。

「…この紙、何か描いてね?」

友人が言う。確かに、紙がはためく度に、地面に伏せてある面に、何かが描いてあるのが見える。

ここまで来たら…

俺は思い切ってその紙を釘から剥がし取り、めくって裏を見た。

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