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過疎地域で友達と遊んで行方不明になった小学生の神隠し

この記事の所要時間: 435

今から15年くらい前、俺が小学生だったときの話。

俺の住んでた町は広いけど、その分、人の密度が少ない過疎った街だった。

小学校が町の中心にあって、学校が少ないからあっちこっちの地区から子供が通ってた。

まだ変質者がどうの、防犯ベルがどうの、って頃じゃなかったから、みんな友達2~3人で下校してた。

遠い子で、1時間かけて徒歩で通ってたかな。

冬とか暮れるのが早いから、遠い子は部とかにも入らず、一気に帰った。

山道だったり、普通の舗装された道路でも街頭なんか無いからね。

集落の明かりを目指して、2~3人で帰ってたわけ。今は、通学班とか組んでるのかな。

 

でも、中にはそういう友達がいない子がいるわけね。

俺の同じクラスにもそういう子がいた。仮に<K>と呼ぶ。

その子は、ちょっと知恵が遅れてる子だったけど、養護学級とか出なくて普通学級に通ってた。

でも、やっぱり地区の遊びグループには入れなかったのね。で、帰りはいつも徒歩30分の道を一人。

田舎だし、子供が知的障害だから、って親が車で迎えにいったりとかはしなかった。教育方針だろう。

東門から出る俺は、西門にむかう<K>をときどき見かけたけど、たいてい1人だったなあ。

 

 

ある日の道徳の時間、先生が言ったんだ。

「最近、寄り道をしている子がいるらしいですね」
って。

みんなドキっとした。

そりゃみんな、ちょっとはゲーム機が豊富な家でちょっと桃鉄やるとか…してた。

でも、いつもはそんな事は黙認してくれてる。

先生は続けた。

「別に、暗くならないうちは、友達の家に寄ってもいい。でも、危ないところに遊びにいく子がいる。それはやめなさい。」

危ないところ?

その話の真意を知ったのは、今度は友達の噂話からだったんだ。

 

「あのさ、<K>だよ。あいつ、帰り道、橋の下で遊んでんだ。」

確かに、<K>の家の方角には、ちょっと大きな川が流れていて、最近出来た新しい橋と、となりに古い橋が架かっている。

新しい方は街灯があるけど、古い方にはそんなものはない。石造りの古い橋だ。

橋の下には河川敷が広がっていて、一応階段があってそこにいけるようになっている。

河川敷は、子供の身長くらいの草が茂ってるが、橋の真下は光があたらないのか、ちょっとした空間が出来ている。

昼には、ちょっとした秘密の遊び場みたいな感じで、マルイのエアガン持って水面を撃ちにいったりしてた。

<K>は、そんな遊びに来た事は無かったが。

 

だけど、それは新しい方の橋の話だ。

<K>は、古い方の橋の下にいたそうだ。

聞けば、同じ地区のやつらは帰りに新しい方の橋から<K>っぽいやつが、いつも古い橋の下にいるのを見ていたそうだ。

子供は、馬鹿だなーとか思って放っておいてたんだけど、親にその話をしたらえらく気にして学校に通報したんだそうな。

<K>は、昼に職員室に呼ばれていった。

でも、<K>はその寄り道をやめようとしない。

 

<K>が帰ろうとしたとき、先生が話しかけたのを聞いた。

「友達と遊ぶのは大事だけど、危険なところで遊ぶのはもうだめだからね。」

釘をさされてる、俺はちょっと笑ってしまった。だけど、なんか違和感があった。

あいつは、いつも一人でいるんだ。それに、橋の下にいたのも<K>ひとりって聞いたのに。

もちろん、いくら注意されようとも、それから<K>が寄り道をやめることは無かったんだ。

 

祭りの夜。俺は友達と友達の家にいた。

祭り囃子が聞こえる薄暮の中みんなで花火とかして、普段出来ない夜遊びを楽しんでた。

花火が終わり、俺たちはその家に一晩とまる事になった。

「俺、<K>の友達、見たんだ。」

一人が、唐突に話し始めた。

見てはいけないものを見た、そんな言い方だった。

おそらく、あまりの気味悪さにずっと胸にしまっていたのだろう。

「あいつ、橋の落書きにむかって楽しそうに話してた。いつも」

みんな一瞬しーんとなった。

夕暮れ時。カナカナ蝉がなくころ。

<K>は、いつも「友達」といたのか。

 

 

ある冬の日、ついに最悪の事が起こった。

街の防災無線が、子供の行方を捜している。

<K>がいなくなったんだ。

あまりに遅いので親が学校に連絡したところ、とうに帰った、と言われたのだ。

折からの強い雨。

公務員の俺の親父には、リンリン電話が舞い込み、コートを着て長靴を履いて出て行った。

顔を知ってるか、と聞かれて俺は親父の車に乗せられた。

行く先は当然川だ。

既に先生や近くの同級生、警察…

台風みたいに人が集まってた。

でも、結局<K>は見つからなかった。河川敷にも何も無い。

ただ、橋桁には赤いペンキでマルが描かれ、その中には人の顔のような落書きがあったのを覚えている。

 

「行方不明」の貼紙も色あせた頃。

その落書きも消されたのか、もうあとかたも無かった。

それだけの話だ。
友達。ひょっとして<K>は今、その友達と一緒にいるのだろうか。

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