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屋根へと集まる無数のカラスがついばむモノ

 2015.12.13     恐怖体験談     コメントを書く     Loadingお気に入りに追加
屋根の上の鴉
この記事の所要時間: 813

俺が大学3年になる頃の話。

それまで大学のすぐ近くに住んでたんだけど、バイクを買って通学時間が短縮できるようになったのと、部屋が荷物で手狭になってきたこともあって、引っ越そうと思ってあれこれ部屋を探してたんだ。

そしたら、隣町の不動産屋で少し大学から離れるけれど、家賃はそのままでそれまでの倍ぐらいの広さの部屋を見つけた。

4階建てのマンションの4階で、屋根がちょっとカマボコ型のドームみたいになってロフトのついてる物件で、すごくお得だった。

家賃がすごく安いから、下見の時に不動産屋の人に

「自殺でもあったんじゃないんですか?」

って冗談めかして聞いてみたんだけど

「自殺があったらもっと安くしてますよ。それに前もお兄さんと同じ大学の学生さんに住んでもらってたんですよ」

って言われて、特に怪しい感じでもなさそうだし、とにかく安くていい物件だったから、信用してそこに決めたのね。

 

あっという間に引越しの日になって、友達に手伝ってもらって荷物運び込んであれやこれや作業して、落ち着いたときにはすっかり夜中だった。

ホントは友達と新居で酒飲む話になってたんだけど、前日から徹夜で片づけしててあまりに疲れたので、その日は帰ってもらってぶっ倒れるように寝込んじゃった。

次の日も休みだったから、そのままとことん寝てやるつもりだったんだけど、3~4時間してに急に目が覚めた。

最初、自分がなんで目覚めたのかもわからずに『?』って感じで、明け方の薄明るい部屋の中でぼさっとしてたんだけど。

ちょっと目が冴えて来ると同時に、なにか屋根の上でごそごそ音がしてるのに気付いた。

さっきも書いたけど、ロフトがあって屋根裏みたいな空間になってるから、ちょっと音が響くわけよ。

ちょうどベランダの窓の上のあたりから、ごそごそ、かさかさ、ごそごそ、かさかさ、って聞こえてくる。

何の音か分からなくて気持ち悪かったんだけど、眠たい所邪魔されて少しイラッと来たのもあったから、思い切って窓開けてベランダに出てみた。

そしたらその瞬間、バサバサバサっ!ってでっかいカラスが2、3匹飛んでいった。

『なんだ鳥か』って思って、その時はまたすぐ寝ちゃったの。

 

そのまま何事も無く3日ほど過ごしてたんだけど、毎朝鳥が来てガサガサやるのは続いてた。

正直ウザかったけど、『家賃が安いしこういうのもしょうがないかな』って思って慣れるまで我慢することにした。

そして次の日に、引越し手伝ってくれた友達とあと何人か呼んで部屋で飲み会やったんだ。

いろいろ持ち寄ってワイワイやって、気がついたら明け方。

最後までいた2人もそろそろ帰るって事になって、俺が最寄り駅まで送っていったのね。

まだ誰もいない明け方の道をてくてく歩いて駅まで行って、またてくてく歩いてマンションの前まで帰ってきた。

中に入ろうとしたその時、ハッと上を向いて気付いたんだけど、うちのマンションの上だけカラスが10匹くらいいるんだよ。

それもほとんどが俺の部屋の真上。それ見て、すごく気味が悪くなった。

しかも、普通カラスってアンテナの上とかにいるじゃない?

でも、うちのマンションもアンテナの上にも2匹ほどいるんだけど、それ以外が全部俺の部屋の上にいるのね。それでなんかガサガサやってんの。

ほろ酔い気分も一気に醒めて、速攻で家に帰って、部屋の中から物干し竿で天井ガンガンガンガン!って突いてやった。

そしたら、またバサバサバサって飛んでいったんだけど、やっぱりどうも気分が悪い。

 

朝になるのを待って、ちょっとキレ気味で不動産屋に電話した。

「天井にやたらカラスが来てうるさくて寝れない。なんとかならないか」って。

そしたら

「わかりました、一度業者を伺わせます」

って言って、結構あっさりそういう話になった。

 

2日後にヘルメットと作業着のオッサンが2人ウチにやってきた。

事情を話すと

「巣でもあるんでしょうかね」

って言って、若い方のオッサンがベランダにロープと脚立を出して、俺ともう一人が見守る中、手際よく屋根に上って行ったのね。

上ってすぐだったと思う。その若い方が、嫌な顔して戻ってきてこう言うんだ。

「骨がある。良く分からないけど、多分人間の」って。

俺ももう一人のベテランの方のオッサンも「ハァ?」って感じで、今度ベテランの方が代わりに上ったのよ。

そしたらやっぱりすぐ戻ってきて、

「ありゃ子供の骨だわ、スイマセンちょっと会社に連絡します」

俺は最初、『2人して俺が学生だからおちょくってるのか?』とか思ってたんだけど、オッサンらの姿を見るとどう見てもマジなの。

 

結局、不動産屋が来て、警察も来て、オッサンと俺とあれこれ聞かれて、俺はそのまま言われるままに警察署まで行った。

警察が言うには、詳しいことは鑑定してからだが、おそらく嬰児の白骨死体だと。

死後かなり時間が経ってるはずだから、最近引っ越してきたばかりの君を疑うつもりはないが、一応いろいろ聞かせてほしい、と。

そこまで聞いて、やっと自分の住んでた部屋の真上に人間の死体があったってことを脳が理解できた。吐き気がしたよ。

結局その日、そのまま夜まで拘束されて、フラフラになって友達の家に泊めてもらった。

警察からの帰り際、警官はもう全員俺の家から引き上げたって聞いてたが、もちろん家に帰るなんて気持ち悪くて出来なかった。

 

次の日、朝一番で不動産屋に行って即時解約を申し込んだ。

契約では2ヶ月前に解約通知しないとダメってなってたけど、事情が事情だけに向こうも何も言わなかった。

敷金や手数料や当月の家賃など一切の金を返却することも了承させた。

今回の引越し代と次の引越し代も負担してもらえる事になった。

ただ不動産屋が言うには、騙して契約させたわけじゃないことだけは分かって欲しいとのことだった。

自分達もまさかそんな物が屋根の上にあるとは思わなかったし、鳥が多いのも把握してはいたけど、近くに食肉処理場があるから特に不自然には思わなかったとのこと。

まあ俺は、金銭面で全面的に主張が通ったのでそれ以上何かを言うつもりは無かった。もちろん、いい気分ではなかったけどね。

 

そんで早速家を出ることになって、当然そんなにすぐに新しい部屋の都合がつかないから、当面友達の家に居候することになった。

小さな荷物だけはそこに持っていって、大きい荷物はレンタル倉庫に預けることにした。

幸い何個かのダンボールは荷解きせずにそのままだったし、他のものも結構すぐ片付いたから、解約を申し込んだ3日後には部屋の荷物を全部運び出し終えてた。

そして、部屋がカラになったから段取りどおり不動産屋を呼んで、部屋の引渡し前の確認をしてもらった。

確認も終わって、不動産屋と俺と順に部屋を出て鍵をかけて、さあ行きましょうという段になって、俺は玄関の表札をまだはがしてないのに気付いたんだ。

折りたたんだルーズリーフに、サインペンで名前書いただけのお粗末な表札を表札入れから抜き取った時、もう一枚裏に紙が入ってるのに気付いた。

全く見覚えのないその紙は、ひっくり返すと一面サインペンで塗りつぶしたようになっていた。

日に当てて透かして見ると「○○祐子」か「○○佑子」と書いてあったように見えたが、はっきりとは見えなかった。

不動産屋は
「前の人の書き損じですかね、多分、表札の紙が薄いから書き損じを裏に重ねて入れてたのを置き忘れていったんでしょう」
と言っていた。

俺は、自分の前に住んでいたのは学生と聞いていたので何となく男だと思い込んでたから、少し面食らったんだけど、

「そうですか」とだけ言って、そのまま不動産屋と別れてバイクで友達の家に帰った。

 

「女が住んでいた」って分かって、何となく嫌な気分はあった。

俺が家について友達に真っ先に尋ねたのは、1年ぐらい前に起こった暴行事件のこと。

実は、うちの大学の女子学生が帰宅途中に暴漢に襲われる事件があって、それ以来注意を喚起するビラが毎日のように配られてたのよ。

その学生は、結局事件のショックが尾を引いて大学をやめちゃったって噂で聞いたんだけど、事件が起きたのが確か、俺のマンションの最寄り駅の近くだった。

それことについて友達に尋ねてみると、
「確かにあの駅って書いてあった覚えがあるなあ」
って言っていた。

予想通りの返事を聞いて、俺には思うところがあったけれど、その時は敢えてそれは口に出さなかった。

 

それからは、マンションで起きたことについてほとんど話す機会もなかった(周りの人も気を遣ってくれてたのかも知れないが)。

ただ一つ不気味だったのは、この件に関してテレビでも、地元の新聞ですら全く触れられていなかったこと。

大学の図書館に行って、あの期間の新聞をありったけ調べたが、何一つ記事が載っていなかった。

何らかの見えざる力が働いたのか、それ以上のことは調べる術もないわけだが。

 

多分、俺は8割か9割ぐらいで、前の住人が我が子を屋根に遺していったんだと思っている。

確信はないんだけど。

嬰児とは?

あかんぼう。みどりご。あかご。

三歳ぐらいまでの子。えいじ。

画像出典元:st-zephyr.blogspot.jp

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