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ナチスの腕章を付けている少年が街を徘徊するという奇妙な噂が流れていた大阪某市

この記事の所要時間: 452

私が昔住んでいた大阪S市では、奇妙な噂が流れていました。

以下がその内容ですが、何せ10年も前の話なので記憶が定かではありません。

  • 夕方から夜にかけてナチスの腕章をつけた少年が街を徘徊している。
  • その少年と目が合うと警棒を持って追いかけられる。
  • 片足が義足であるというのにすごいスピードで、自転車で全力疾走しても追いつかれそうになった。
  • いつも3匹~5匹くらいの犬を連れている。

その噂の共通点は、確かこんな具合だったと思います。

当時は、学校の怪談ブームで口裂け女などが流行っていたので、恐らくその類の物だろうと私は内心バカにしていたのですが、この噂が一気に現実味を帯びた事件が一度ありました。

記憶力の良くない私でも、この出来事は鮮明に覚えています。

 

 

その日は、中学一年生の丁度今くらいの時期で、残暑でとても蒸し暑い夕方でした。

私は、部活が終わってから教室に忘れ物を取りに行ったか何かで、いつも一緒に帰るグループとは別れ1人で下校していました。

下校途中、私たちの間で大東の坂道と呼ばれていた暗く細長い坂道に差しかかった時です。

向こうから歩いて来る異様に細長い人影が見えました。

「あっ! やばい。」

私は瞬間的にそう思いました。

 

何故なら、その人影は5匹の犬を連れているのです。

しかし、前述のとおり私には怪談の類をバカにしているところがあり、また少年時代特有の好奇心から歩みを止めず進んでいきました。

さすがに、直視する勇気は無かったので、俯きながら歩いていきました。

そして、坂も中腹くらいに差しかかった時です。

突然、前方から変な音が聞こえました。

 

その音は
「サバンッ、サヴァンサヴァンッ」
とでも表現すればよいのか、とにかく奇妙な音でした。

突然そんな音がするものですから、私はついつい首をあげてしまいました。

そして、見てしまったのです…。

その腕章の少年を。

 

その少年は、年のころは僕と同じくらいに見えましたが、異様に顔色が青白く、頬はこけ、露出している腕は白く枝のように細いのです。

しかし、その腕にはしっかりと…例のナチスドイツのハーケンクロイツの腕章が巻かれていました。

また、噂どおり足は義足の様でした。

そして、何より印象的だったのは、少年の鋭く異様な光を帯びた眼光でした。

そこで私は
「しまった!」
と思いました。

 

少年の鋭く光る目を見てしまったからです。

その瞬間、彼の目が一瞬白眼になったように見え、頭上に上げた左手には警棒が握られていました。

私は、振り返ると全力で大東の坂道を駆け上りました。

この坂道は、全長40メートルほどの急な坂道で、腕章の少年と目が合った位置から坂を上りきるまで20mほどありました。

その20mほどを全力で走っている間、

後ろから
「サバンッ サバンッ サバンッ」
という音が聞こえてきます。

 

それは、どうやら腕章の連れている犬?(今思うとそれが犬だったのかどうか定かではありません。)が吼えている鳴き声のようでした。

その証拠に、音は幾つも重なって発せられ、徐々に近づいてくるのがわかります。

私は当時陸上部に所属し、学年でも3本の指に入るくらいの俊足だったのですが、

「サバンッ」
の音は近づいてくるばかりです。

冷汗まみれで半泣きになりながら、急な坂道をとにかく全力で走りました。

わずか20mほどの坂道が、とても長く感じられました。

そして、
「サバンッ」
の音が本当に間近、つい足元から聞こえてくるくらいのところで、なんとか坂を登りきったのです。

 

大東の坂道を登りきったすぐ横には小さな商店があって、私は半泣きになりながらそこへ駆け込みました。

その店にはいつも寝ている、役立たずの番犬がいました。

しかし、私が店に入った瞬間
「キャンキャンキャン」
と激しく吼えまくっていたのが、鮮明に聞こえてきました。

店主のおばちゃんは僕の様子を見ると、
「会ってもうたんやな…」
と、ため息混じりにつぶやくとこう続けました。

 

「もう大丈夫や“あれ”は動物見るとしばらく来えへんから。

兄ちゃん運動やってるやろ?

あぁ…やっぱり、運動やってる子はよく狙われるんや。

まあ安心し。一度会ったら明日以降はもう大丈夫やから。

ただ今夜だけは気をつけて。部屋の窓は絶対閉めとくんやで。

もし、なんかペットを飼ってるんなら今夜だけ外に出しときや。

あれは動物がおると何もしてこうへんから。

それと帰るんなら今の内うちやで。さ、はよし。」

 

こういうと、私を外に連れ出し坂道の下まで一緒に来てくれました。

そして、
「なるべく急いで帰りよ。」
と付け加えると、帰っていきました。

私は、また半泣きになりながら大急ぎで家に帰りました。

そして、親が止めるのも聞かず、普段座敷犬として飼っている犬のトシヒコを家の外につないでおきました。

 

そして、その晩。

私は、部屋の戸締りをいつもより厳重にと、雨戸を閉めている時です。

すぐ近所で、例の
「サヴァンッ」
の声が聞こえたのです。

そして、トシヒコが必死に吼えている鳴き声も聞こえました。

その夜は、ほとんど寝付けず夜通し電気はつけっぱなしでした。

 

以上が、腕章の少年にまつわる私の体験した話です。

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