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暗示ゲームでマインドコントロールされやすいお年頃

 2015.12.19     恐怖体験談     コメントを書く     Loadingお気に入りに追加
マインドコントロールされた人の心理状況
この記事の所要時間: 96

この話は、よくあちこちで得意げに話してたから、自分が誰か分かってしまった友人知人様方は笑って見逃して下さい。

まだ自分が、BLとか知らない純粋な中学生だった頃の話。

剣道部だった自分が、放課後いつも通り部の活動場所である武道場に行くと、

顧問の先生とか部長がまだ来てないのをいい事に、部員達があちこちでじゃれあったり、おしゃべりしたりして遊んでいる。

それは、いつもの事だから何もおかしくはないんだけど。

その中に、何故か二人一組で向き合って、何やらきゃーきゃー騒いでるのが数組いた。

よく見ると、それに参加してない他の部員達も遠巻きに、でも興味深げにその数組を眺めている。

 

確か、稽古が始まるまで道場の電気はつけないとか、決まりがあったんだと思う。

普通教室よりもう少し広い道場は、大きな窓があるとはいえ、自然光だけに頼った状態ではちょっと薄暗かった。

いつもはそんな事気にならないのに、その日は何か嫌な感じがした…って程でもなかったんだけど。

とにかく、いつもと何かが違う気がした。

とっさに入り口で立ち止まり、よく分からない違和感に戸惑っていると、

謎の二人組の一組の片割れがわりと仲の良かったYで、Yは自分を見付けていつも通りの笑顔で寄ってきた。

「O(自分)もやってみる?超怖いよ!」

ちょっと興奮気味なY。

何をしているのか聞いてみると、今していた遊びを楽しそうに説明してくれた。

 

「まず、二人一組になって向き合う。仮に、二人をAとBとする。

Aは、Bに向けて両手を差し出し、Bは差し出されたAの左右の手首それぞれに、糸だか紐だかを結ぶつもりでその動作をする。

結び終わったら、Aは「きをつけ」の状態に手を戻して力を抜く。

それからBは、胸の前で自分の両手をグルグルする。

『♪いーとーまきまき』って歌いながらやるアレみたく。

そうすると、Aの手首に巻かれた見えない紐が巻き取られるように、勝手にAの両手が前へ持ち上がっていく。」

 

「本当に上がるんだよ!」

一通り聞いた自分は勿論信じなかったが、疑いの眼差しを向ける自分にムッとしたようにYは言うと、そこで見てろと早速実演し始めた。

巻き取り役の部員が手をくるくるまわすと、糸を結ばれた(ことになっている)Yの手がゆるゆると持ち上がる。

「ほらね!」
とYは騒ぐが、どう考えてもYが自ら腕を動かしているようにしか見えない。

「自分で上げてるんじゃないの?」
と聞いても、

「違うよ、勝手に持ち上がるの、これは霊が動かしてるんだよ」
と言い張るY。

 

ようはコックリさんみたいなものか。

怖がりの怖い物好きであった自分は、何かで読んだコックリさんの正体を思い出し、目の前の遊びと照らし合わせて密かに納得した。

霊が動かすと信じて、無意識に自分で腕を動かしているのだ。

思い込みの激しい、暗示にかかりやすいお年頃ならではの遊び。

そんなことを考えていると、Yが持ち上がった腕をゆっくり降ろしながら

「Oもやろうよ」と誘ってきた。

何故、すぐに腕を降ろさないのかと思ったら、

「遊びを終えるにはBが最初にしたのと反対方向に手を回して巻き取った糸を緩め、Aの手を元の位置まで降ろさなくてはならない。
いつまでも巻き取り続けると、持ち上がっていく腕は最終的にA本人の首を絞めてしまう」

のだそうだ。

幼稚なようだが、ちょっと気味の悪いルールである。

 

終了の儀式を終えたYが、改めて自分にまとわりつく。Oもやってみようよ、面白いよと。

今も昔も零感である自分は、霊の存在に興味はあったが半信半疑で、ありえないとは思いつつ、本当に腕が動いたら怖いので遠慮した。

見渡すと、この不思議な遊びはすっかり道場内に浸透したらしく、向かいあって騒いでいる部員がさっきよりも増えている。

みんなして、単純にも程がある。

「ねぇ、Oもやろうってば!」

なおもYが誘う。やめとくよと離れても、腕に抱きついてついてくる。

あんまりしつこいのでイラっときた自分は、

「いいってば!」
と強くYの手を振り払った。

よろけてやっと離れたYをトドメに睨みつけたが、びびったのは自分の方だった。

 

Yの目の下が紫になっている。

寝不足でできるクマみたいな、黒っぽい紫色だ。

さっきまでそんなクマはなかった。

驚いて固まっている自分に、Yがさらに迫る。

「一回だけだから!」
とか言いながら。

 

Yは、こんなにしつこいヤツだっただろうか。

華奢で可愛らしく、どちらかと言えば気が弱くて優しいタイプなのに。

普段なら、自分がここまで嫌がる前に、とっくに引き下がっている筈だ。

普段通りの可愛らしい笑顔だが、明らかにいつもと何かが違う事をそのクマが示している。

誰かに助けを求めようにも、みんなこの妙な遊びで盛り上がっていて、誰一人自分達のやり取り等気にしていない。

何かおかしい。いよいよ怖くなって、自分は武道場を飛び出した。

 

 

Yは追ってこなかった。

ほっとしたのも束の間、それで結局今のはなんなんだと考えると怖くて道場にも戻れない。

中庭の端に建つ武道館の脇で、中に戻ろうかどうしようか右往左往していると、声をかけられた。

同じ剣道部員のTだった。

 

「何やってんの、中入ろうよ」

不思議そうにこちらを見るTに、私は泣きついた。

Tは、自分の友人の中でただ一人の霊感少女だった。

美人だわ、顔小さいわ、細いわ、ちょい悪だわ、霊感あるわで、私はTを崇拝していた。

今思えば、それこそお子様な自分が、なりきり霊感少女Tに騙されていたのかもしれないが、当時の自分はTを見てもうこれでなんとかなると思った。

 

早口で事情を説明すると、Tは

「ふーん」
と気のない返事をして、ずかずかと武道館に入っていった。

慌てて自分も後を追う。

二階建ての武道館は、入って靴を脱ぐとすぐに剣道部の使っている武道場だ。

入るなり、Yがまたあの遊びをしているのが見える。

武道場の入り口で、Tは部員達の遊ぶ様子を眺めている。

早くなんとかして欲しくて、自分はTに詰め寄った。

「どうなのあれ、ほんとに霊が動かしてるの?」

「ん~…ほとんどは勘違いだけど。ちょっと呼んじゃってるね」

呼んじゃってるってなんだ。

 

「私もやってみる」

Tの衝撃発言にびっくりして、止めるより早くYがこちらに気がついて、駆け寄って来た。

その目の下は、相変わらず暗い紫色だ。

「Tもやる?」

「うん」

誘われるがままに、件の遊びを始めるT。

Yが手をぐるぐるすると、Tの両腕がゆっくりと持ち上がる。

 

一通りの作業を終えたTと武道場を出た。

恐る恐る聞いてみる。

「どうだった?」

「うーん、白い手が後ろから私の手を掴んで押し上げてきた」

Tはけろりと応えたが、もうこっちは大パニックである。

それが本当なら、けっこう大変なことじゃないのか。

 

「何それどうしよう!」

「あんまりいい遊びじゃないみたいだけど、やめれば平気だと思うよ?」

そう言うと、Tは武道場の入り口に立って、勢い良く手を叩いた。

「もう先生来るよ!着替えて稽古始めよう!」

Tの言葉に、つまらなそうにしぶしぶと部員達が更衣室に入っていく。

これで、もう大丈夫らしい。本当だろうか。

 

更衣室に向かう部員達の中に、Yを見つけた。

「Yのクマは、その霊とかとは関係ないの?」

心配になって聞くと、ああそうだったと呟いて、TはYを呼んだ。

「なぁに?やっぱりOもやるの?」

しつこいY。その笑顔が、妙に虚ろに見えて怖い。

そんなことは少しも気にしていない様子で、TはYに後ろを向くように言った。

何か新しい遊びを始めるとでも思ったのか、素直にYは自分達に背中を見せた。

するとTは、Yの首の付け根あたりを、ぽんぽんと二回程、軽く叩いた

はたいたと言う方が近いかもしれない。

 

「はいこっち向いて」

Tにこちらを向かされたYの顔は、すっかりキレイになっていた。

あんなに濃かったクマが、さっぱり消えている。

呆気にとられている自分をほっといて、Yを更衣室に押し込み戻ってきたTは、

「今のは、誰にでもできる簡単なお祓いだから覚えとけ」
みたいなことを言った。

覚えるも何も、もうそんなお祓いが必要になるような体験をしたくない。

でも、不思議な出来事はこれだけは終わらなかった。

 

すごい。これって、ほんとに心霊現象じゃないのか。初めて見た。どうしよう。

自分がぐるぐると無駄に考えを巡らせている横で、Tは別段いつもと変わらない調子で

「着替える前にトイレに行ってくる」
と言う。

興奮状態だった自分だが、今Tから離れるのは心細いのでついていった。

 

武道場のトイレに入る。

Tは個室に。自分は特に用はなかったので、手を洗って、鏡に向かって髪型を直したりしていた。

すると、いきなりTが個室で
「うわ!!」
と大声を上げた。

さっきの今なので、正直飛び上がる程びびった。

すぐに、よろよろとTが個室から出てくる。

何だ、どうしたと歩み寄ると、

「今背中、押されたってゆーか、叩かれたってゆーか…すごい痛かった」
と言う。

 

いやいやいや。

そんなに人を怖がらせて面白いか、とビビリながらも笑い飛ばすと、

「じゃあ見てみろ」
と、Tが体操着の背中をめくりあげて見せた。

確かにその背中には、今ついたばかりにしか見えない真っ赤な両手のあとがついていた。

誰かが、後ろから思い切り両手を叩き付けなければできない手の向き。

Tの手よりもずっと大きい大人の手のあと。

自分は絶句した。なんだ、これ。

 

「私が遊びを中断させたから、”邪魔するな”って言われたのかも」

Tは、溜め息一つで事を片付けた。

自分は、幽霊の存在を信じるようになった。

画像出典元:bylines.news.yahoo.co.jp

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