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真夜中にノックしてきた姿なき者の気配

 2016.01.10     恐怖体験談     コメントを書く     Loadingお気に入りに追加
この記事の所要時間: 325

もう五年くらい前になるのだが、その頃俺は五階建てのマンションの最上階に住んでいた。

その日は、残業で終電に乗り帰ったのは二時近かった。

翌日も朝から仕事だったが妙に目が冴えてしまい、ビールを飲んみながらぼんやり深夜放送を見ていた。

 

と、トントン、トントンと玄関を叩く音がする。

夜中だよ、時計を見ればもう三時を過ぎていた。

 

俺はしばらく茫然とドアを見てたと思う。

すると、またトントン、トントンと音がする。

まぁ夜中に呼び鈴を押さないだけまだましか。

 

そんな事を思ったかどうか

俺はドアの前に行くと、内側から

「どなたですか。」

と聞いた。

 

返事はない。

覗き穴から覗いてみる、誰も見えない。

チェーンは掛かってるし、少しだけドアを開けて見ようか、そうも思った。

すると、また目の前のドアがトントン、トントンとたたかれた。

 

その瞬間、俺は背筋がゾッとなり、両腕に鳥肌が立つのを感じた。

ああいう怖さは、初めて経験するものだった。

いやだ、絶対ドアをあけたくない。

 

どのくらいドアの前にいたのか。

やがて、プッツリとドアをたたく音はしなくなった。

俺は恐る恐るドアに耳をつけ、廊下の様子をうかがった。

そのマンションには、一応エレベーターがあって俺の部屋は耳を済ませばそのドアの開閉が聞こえる距離にあった。

だけど、外は至って静か。

 

今度は、俺は部屋にとって返すとカーテンをあけ、マンションの入り口に面した通りを見る。

いくら待ってみても入り口からは誰も出て来ず、通りには車一台走ってはいない。

恐る恐る窓を開けベランダに出ると、周りの部屋を見てみる。

どの部屋の灯りもすでに消えている。

 

突然、マンションの右手の方でドサッといったかなり大きな音がした。

右には駐車場があった。

ドサッというか、ズシャッというか。

 

とっさに、俺の頭に浮かんだのは飛び降りだった。

地方の田舎町で、五階以上のビルはまわりにほとんどない。

ここで、本来なら俺は直ぐに外へ様子を見に行くべきだろう。

ただ、先の事もあったしヘタレな俺は、少し躊躇したあげくこのマンションの一住人という匿名で警察に電話した。

 

幸いにも警察は付近を見回ってくれるという。

俺は報告主がわからないように部屋の灯りを消して、窓の外をジッとうかがっていた。

パトカーが一台来るのが見えた。

パトカーはマンションの前に停まり、中から警官が二人出てくるのが見える。

彼等は懐中電灯を照らしながらマンションの横手へと消えていく、付近を調べてくれているようだ。

 

15分くらいした頃だろうか、彼等は再びパトカーまで戻ってくるとやがて去っていった。

どうやら、何も不審な事はなかったらしい。

じゃぁ、俺が先程聞いた音はなんだったのだろう。

 

 

翌朝、出勤時にちょうど管理人に会った。

俺は昨夜の出来事を再び管理人に話した。

すると、管理人は

「またですかー。」

とすごくイヤな顔をした。

 

俺は会社に行ってたのでまったく知らなかったのだが、昨日の昼頃近所に住むOLがこの建物の屋上から飛び降りたらしい。

昨夜、俺が帰ってきたときには既に片付けられて、普段となんら変わりはなかった。

俺は慌てて駐車場へと行こうとする管理人に、昨晩警察に連絡した顛末を話すとともに、再び背筋が寒くなるのを感じた。

 

電車からも見えるそのマンションを見ながら

なぜ、俺の部屋なんだ

あの時、ドアを開けていればいったい何が見えたろう

そう思った。

 

ある地方都市への出向中での怖い話。

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