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ひーぃぃいいいいーーーと言いながら現れるバケモノ女がいた女子社員寮

この記事の所要時間: 829

今から20年前、ある女性が大阪の企業に勤めていた。

毎日続く激務に疲れ果て、そろそろ転職しようかと思っていた頃の話である。

その企業の社宅の女子寮というのが、山奥の骨董品のようなボロアパートだった。

かろうじてユニットバスをつけただけの古アパートを嫌い、その社宅に住んでいるのはその人だけだった。

会社が家賃の大半を払ってくれていることと、静かで環境が良かったためだという。

 

 

ある日、激務を終えて夜中にへとへとになって帰ってくると、自分の部屋に明かりが点いている。

おかしいな、消し忘れたのか……と思っていたが、

それからもしばし消したはずの部屋の電気が家に帰って来ると点いていることがあった。

会社の総務部に言って点検してもらったが、異常はなかったという。

 

そのアパートには通常の階段の他に非常階段があり、その人の部屋は正面から見て左端にあった。

そんなわけで、彼女は疲れ果てて帰ってくるとアパートの左端にある非常階段を使って部屋に帰っていた。

 

その日の仕事も深夜になった。

くたびれて非常階段を登り、非常扉を開けると、人がいた。

その人を見た瞬間、体験者はぞくっと寒気を感じたという。

 

そこにいたのは女性だった。しかし、知り合いではなかった。

見たこともないような物凄い長身の女性で、白い、フリル付きのワンピースを着ていたという。

しかもそのワンピースは汚れており、あちこちに枯れ葉がついている有様であった。

汚れた白い靴に穴の開いたストッキング、パサパサになった長髪には、すり切れかかったリボンが結ばれていたという。

 

このアパートに私以外の住人はいない、ホームレスだろうか……と、そんなことを考え、

部屋に入ろうとバッグから鍵を取り出した瞬間だった。

 

ひーぃぃいいいいーーー

 

悲鳴とも笑い声ともつかない絶叫が廊下に響き渡った。

体験者は肝を潰してその女を見たという。

するとワンピースの女は、一歩一歩こちらに歩み寄ってきたのだという。

薄暗い廊下の中で、そのワンピースの女をよく見ると、肌が異様に白く、目の周りは汚れて落ち窪んでいた。

その瞬間、体験者はこの女がこの世の者ではないとわかって、背筋が凍りついた。

 

ひーぃぃいいいいーーー

 

また甲高い声が女から発し、身の危険を感じた体験者は非常扉の外に飛び出た。

ゆらゆらと揺れるワンピースの女の影が、非常扉の窓に映しだされた瞬間――

バン!

 

ひーぃぃいいいいーーー

 

ワンピースの女が非常扉にぶつかる物凄い音が非常階段に響き渡り、同時にあの絶叫が耳を劈いた。

(あっちに行って!あっちに行って!)

祈るような気持ちで非常扉のドアノブを握っていると、女の影が窓から離れ、あの絶叫が徐々に遠ざかっていったという。

しばらくして、体験者は恐る恐る非常扉を開け、廊下の向こうを見た。

 

まだあのワンピースの女はそこにいたが、こちらに背を向け、廊下の向こうにゆらゆらと歩いてゆく。

そのとき、この女の目をかすめるには今しかないという直感が体験者を貫いたのだという。

体験者は非常扉から飛び出るや、急いで部屋の鍵をドアノブに差し込み、自分の部屋に入って鍵を掛けた。

 

部屋の電気はまた点いていたという。だが、この時だけはその奇妙な事態に感謝したという。

しばらく部屋で息を殺していると、やがて廊下から物音が聞こえなくなった。

もういいだろうと、体験者はそっと台所横の窓に近づき、窓から廊下を覗いてみた。

 

女は、まだそこにいた。

うわっと思った瞬間、こちらに背を向けていた女がこちらを振り向いた。

 

ひーぃぃいいいいーーー

 

またあの絶叫が廊下に響き渡った。見つかった、と思ったという。

体験者は部屋に逃げ込んだことを後悔したという。

鍵を掛けたはいいが、あの女に見つかったら逃げ場がないのである。

 

体験者は押入れから布団を引っ張り出し、頭から布団をひっかぶってガタガタ震えるしかなかった。

その隙間から台所の窓を覗くと、その白い女の肩の部分が窓から見えたという。

バン!

あの女が、先ほどと同じように非常扉に激突する音が聞こえた。

あまりの恐怖に、体験者は(なんで私がこんな目に……)とボロボロと涙を流しながら震えていたという。

 

ひーぃぃいいいいーーー

 

またあの声だ。体験者は布団の隙間から窓を覗いた。

女の薄汚れたワンピースを見て、体験者はぎょっとしたという。

さっき窓に映った時は、確かに女の肩が窓に写っていた。

だが、今は肩が見えない。

ただでさえ化物のように身長が高い女の肩が、まるで急に伸びたかのように見えたのだという。

 

どういうことだ、女の身長が伸びているとでも言うのか――

そう思った瞬間、あの女の姿が窓のところで止まった。

 

ひーぃぃいいいいーーー

 

一分、五分、十分……例えようもなく長い時間が過ぎ、体験者は布団から顔を出し、窓を見てみた。

その瞬間、気絶しそうになったという。

あの女の顔が、廊下の窓にべったりと張り付いていたのだという。

 

ひーぃぃいいいいーーー

 

ついに見つかった。

女の両手が窓枠に掛けられ、(もうだめだ……)と体験者が絶望した瞬間だった。

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