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住人に隠されていた不気味な隣室の存在

 2016.02.13     恐怖体験談     コメントを書く     Loadingお気に入りに追加
この記事の所要時間: 834

30年以上前の話なんですが、聞いてください。

友人が住む三畳一間月3万円のアパートに遊びに行ったときのことです。

冬の寒い日でしたが、狭い部屋で二人で飲んでいるとそこそこ快適でした。

しかし、たまに冷たい風がす~と吹き込んできます。

古いアパートでしたがサッシは新しいものでしたので、どこから抜き込んでくるのか不思議でした。

しばらく飲んだ後、どうしても気になったので友人に聞いてみると、いつもこんな感じだから平気だと言います。

 

共同トイレで用を足した後、おかしな事に気付きました。

そのアパートは2階建てで階段を上った右側にトイレが、左側に10m位の通路がありその両側が部屋になっています。

トイレから見て左側に2部屋、右側に3部屋ありそのまん中が友人の部屋です。

と、思っていたのですが、右側には2部屋しかありませんでした。

左側は階段があるせいで狭いため、少し大きめの部屋が2部屋で右側は小さい部屋を3部屋にしているのでしょう。

廊下の突き当たりに左側の奥の部屋の扉があるのですが、その向かい側は壁になっています。

しかもその壁は奥から3mくらいまで内側に10cmほど張り出していて、ただでさえ狭い廊下がそこだけますます狭くなっていました。

 

部屋に帰って友人に尋ねましたが、それまで気付かなかったそうです。

まあ自分の部屋より奥なので気にはしないんでしょうが。

窓から顔を出して両側を見てみました。すると、ちゃんと両側に窓が一つずつあります。

間違いありません。

この部屋の隣には、もう一部屋存在しているのです。

 

これはきっちり調べなくては気が済みません。

その部屋側の壁は上下2段の押し入れになっているため、まず中の荷物を全部出しました。

奥は幅20センチほどのはめ板が並んでいて、その隙間から冷たい風が吹いていました。

あの妙なすきま風はここから吹き込んでいたのでした。

 

隙間からのぞいてみましたが、真っ暗でなんにも見えません。

たぶん向こう側も押し入れになっているでしょうから、襖が閉まっていれば何も見えないでしょう。

無神経な友人もさすがに気味が悪くなったようで、その日は別の友人の部屋に泊めてもらうことにしました。

建物の外からは隠れた部屋の窓は他の建物が邪魔で見ることが出来ず、何か調べるにしても昼の方が怖くないので友人の部屋に急ぎました。

 

翌日、部屋に戻って調査再開です。

まず羽目板の隙間は昼でも真っ暗でした。

ライトで照らしてみましたが、隙間が狭いためうまく照らせません。

廊下で調べていると向かいの部屋の住人が出てきました。事情を説明すると不自然な印象はなかったそうです。

そうです、部屋の間取りはその住人しか解らないので、廊下から見ると広い部屋があるようにしか見えないのです。

隠し部屋の存在は友人の部屋に住んだものしか知り得ないのです。

廊下の壁はしっかりしていて、他の壁と同じ色で塗ってあるため張り出している以外はおかしな点はありませんでした。

 

それ以上何も出来ないので、思い切って近所に住む大家さんに聞いてみることにしました。

大家さんは人の良さそうな50代の女性でした。

でも謎の部屋の話は一切してくれず、「管理している不動産屋に聞いて欲しい」と言われました。

 

管理会社に行くと担当者が出てきて開口一番、謎の部屋の話を始めました。

たぶん大家さんから連絡が行っていたのでしょう。

いろいろ細かい説明はありましたが、今は部屋ではなく納戸として使用しているそうです。

出入り口がないことについては一切説明がありませんでした。

自分が入社したときはあの状態だったので、理由までは分からないそうです。

工事業者の手違いかもしれませんねって言ってました。

説明の後で賃貸契約書を出してきて「家賃を2.5万円に下げさせてもらいますので、それでどうでしょう」と言ってきました。

友人は考えさせてもらいますと言って部屋に戻りました。

 

管理会社からの帰り道、友人と相談して隣の部屋へ入ってみることにしました。

入ってみて何かあれば解約して、何もなければそのまま住もうということになったのです。

もしかしたら、こっそり隣の部屋を使うことも出来るんじゃないかと思っていました。その時は・・・。

 

押し入れの羽目板を切れば簡単に入れそうでしたので、金物屋で道具をそろえ早速決行しました。

作業がしやすそうな上段の羽目板を2枚切ることにしました。

まず板に手回しのドリルで3cmくらいの穴を開け、そこから鋸で切り始めました。

板の厚みは1cmくらいでしたので、すぐに切れるかと思ったのですが、素人ですのでなかなか切れません。

ドリルを多用して何とか縦50cm×横40cm位の穴が開いたのが4時頃でした。

2時頃に作業を始めましたので、約2時間もかかってしまいました。

 

作業中気付いたのですが、板の裏側に紙が貼ってある様なのです。

ドリルや鋸の刃に、おが屑と一緒に紙が混ざっていました。

板を外してみるとそれはお札でした。

そこで、少しやばいかなと思ったのですが、とりあえず中に入ってみました。

押し入れに襖はなく、目が慣れてくると薄暗い部屋の様子が徐々に見えてきました。

6畳程のその部屋は角部屋でしたので、窓が二つあるのですが、そのどちらもベニヤ板で塞がれていました。

 

玄関の扉はそのままですが、廊下の様子からするとたぶん開かないでしょう。

その時、壁の様子がおかしいのに気がつきました。

何か模様があるようです。

懐中電灯を付けて壁を照らした瞬間、私は息を飲みました。

 

模様だと思ったのは、壁一面に貼られたお札でした。

扉にも窓を塞いである板にも今顔を出している押し入れの中もお札で埋め尽くされていました。

あまりの恐怖に身動きが取れずにいると、後ろから友人が声をかけてきました。

早く入れよと言う友人と入れ替わって、中の様子を見せると絶句していました。

とりあえず入ってみることにして友人、私の順で狭い穴をくぐり部屋の中に入りました。

 

入ってみると、お札は床にも天井にも貼ってありました。

白いものと赤いものが入り乱れて張ってありましたが、それ以外は別に何ということもありませんでした。

友人は引っ越すかどうかを考えていたようです。

その時『バーン』とすごい音がしました。

驚いて音のした方を見ましたが何もありません。

すると、立て続けに同じ音が部屋中からして振動まで伝わってきました。

その音は何か大きなもので壁を叩いている音なのですが、内側から叩いているように感じました。

 

音と振動はどんどん大きくなって建物全体が揺れているようでした。

立っているのもままならない状態になり、二人同時に押し入れの穴へ飛びつきました。

狭い穴をくぐろうともがいている時、友人が私の足をつかんで引っ張りました。

ですが、こちらも必死でしたのでその手をふりほどくようにして友人の部屋へ逃げ込んだのです。

友人も無事でした。

というより、私より先に部屋に入っていました。

 

そして、私にこう言いました。

「なんで足ひっぱったんだよ。」

私は驚きましたが、慌ててたとか言い訳をしてごまかしました。

 

外が騒がしかったので出てみると、アパートと近所の住人と思しき人がちょっとした人だかりを作っていました。

どうやら、私達が経験した音や振動は外でも聞こえたようで、大騒ぎになっていました。

周りの人に調子を合わせて、心配そうに話している内に、もう大丈夫だろうと徐々に解散していきました。

 

私達も部屋へ戻り、おそるおそる羽目板を用意していたベニヤと釘で戻しました。

当初はベニヤで蓋をするつもりでしたが、はずした羽目板の裏のお札が気になり、ベニヤに羽目板を打ち付けてからそのベニヤで蓋をしました。

友人は持てるだけの荷物を持って私の部屋へ来て、翌日アパートを解約し引っ越しも業者に任せ、それ以降近寄りませんでした。

もちろん私も同様です。

 

 

なぜ20年以上も前の話を思い出したのかというと、実は先日その友人に会ったのです。

現在はお互いに家庭を持ち離れた土地で暮らしていますが、所用でこちらへ来るので飲もうと連絡があり、15年ぶりに会うことになりました。

学生時代の思い出やバカ話をしている内に例のアパートの話になり、恐ろしい体験を鮮明に思い出しました。

 

友人は何年か前にアパートへ行ってみたそうです。

そこは三軒茶屋というところで、もう20年前の面影は全く無く、建物どころか道路さえ新しく造り替えられ場所もはっきり解らなかったようです。

それを聞いてなぜか私はほっとしました。

長い年月で薄れていたとはいえ、あの恐怖の元凶となった場所が無くなっていたのですから。

 

その後は色々と取り留めのない話に終始し、夜半を過ぎたところでお開きにしました。

でもお互いにどうしても尋ねたいことがあったのです。

それはあの事件からずっと聞きたいことでした。

私はもちろん自分のことなので解りますが、友人もきっと、いや、絶対に同じだと思います。

あの事件の後友人とは旅行も行きませんでしたし、二人共常に靴下を履いていましたので確信はありません。

いえ常に、どんなに暑い日でも靴下を履いていたことで逆に確信できたのかもしれません。

 

友人は私に聞きたかったでしょう。

『お前の足首にも手の形の痣はあるか?』と。

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