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凶悪殺●者オマイマ・ネルソン

この記事の所要時間: 527

1991年12月1日

ところはカリフォルニア州コスタメーサ。その日は日曜日で、朝寝をしていたジョン・ポポヴィッチは不意の来客に起こされた。

褐色の肌のグラマラスな女、オマイマ・ネルソンである。

 

「出し抜けにやって来て、夫に無理矢理されたのと泣きじゃくるんだ。なんでも、ベッドに縛られて、ナイフでいたぶられた上に、フェ●チオを強要されたらしい。その手は傷だらけだった。それだけじゃない。彼女はブラウスをたくしあげると乳を出したんだ。右の乳首の上にも傷が2つあった。5センチほどの傷だ。これは酷いと俺が云うと、彼女はパンツのボタンも外し始めた。でも、今思えば、わざわざ脱ぐ必要はないんだよ。傷はパンツの脇の切れ込みから見えていたんだから」

極めて不可解な行動である。
ジョンを誘惑しているとしか思えない。

 

「俺とオマイマは、彼女が結婚する前からの仲なんだ。恋人というわけじゃなかったが、何度か二人だけで酒を飲んだことはあるよ。とにかく、あのスタイルだろ? 地元のクラブやバーじゃ、かなり知られた女だった」

23歳の彼女が56歳のウィリアム・ネルソンと結婚したのは、つい1ケ月前のことだった。
二人はテキサス行きの新婚旅行から帰って来たばかりだったのだ。
ジョンは最初は同情していたが、次第に不審を抱き始めた。どうも彼女の様子が変なのだ。

「彼女はしきりに『あなたを信じても大丈夫かしら?』と訊いてきたんだ。どういう訳だと問いただすと、夫を殺してしまったと云うんだよ。驚いたよ」

オマイマ曰く、なんとか振り解いた手で電気スタンドを掴み、それを夫の頭に叩きつけた。
彼が意識を失って倒れると、ナイフを奪って滅多切りにした。

「そのままバラバラにしたらしい。それで俺にその処分を頼みに来たんだよ。言葉を濁らせていると、報酬として7万5千ドルとバイク2台をくれると云った。頭を処分する時は、身元が判らないように歯を砕いてねとも云ってたな」

起き掛けで頭の回らなかったジョンは、とりあえず承知して時間を稼ぐことにした。
すると、そこに幸いにももう一人の来客があった。近所のご婦人だ。
ジョンはオマイマの傷を彼女に見せた。

「あら、酷い。すぐに治療しなきゃ。消毒薬ある?」

「いや、今、切らしてるんだ。なんなら買って来ようか」

「あたしも行くわ」とジョンとご婦人は連れ立って薬局に行くと見せかけて、そのまま警察署に直行した。

 

オマイマの身柄を確保し、そのアパートを捜索した警察は、夫の殺害が事実であることを確認した。
床に置かれたいくつものゴミ袋には人体の様々な部品が入っていた。
秘部だけが入っているものもあった。
洗濯かごの中のシーツは血みどろで、一見綺麗なベッドもマットレスを裏返すと血みどろだった。
ベッドの上で解体し、浴室で血抜きしたらしい。
冷蔵庫の中にはアルミホイルで包まれた頭部が入っていた。
煮られており、顎は焦げつき、歯は剥き出しで笑っているように見える。
頭髪は剥がされて、別のホイルに包まれていた。

 

ここで一つの疑問が湧く。
一人でここまでやり遂げたのに、どうしてジョンに助けを求めたのだろうか?後は棄てるだけなのだ。一人で出来ない筈はない。
思うに、男を解体する作業に興奮し、ジョンを新たなパートナーとして犯行に引きずり込もうとしたのではないだろうか?
乳房や太腿の傷も自分でつけたのではなかったか?
いずれにしても、常人では理解できない何らかの病理が働いていた可能性がある。
また、その供述は二転、三転し、虚言癖があることも明らかになった。

例えば、取り調べの当初は犯行を否定し、
「電話がかかってきて、知らない男の声で『お前の望み通りにしてやったぜ。ゴミ袋の中を見てごらん。ハンバーガーにしてみてはどうかね?』などと云うので、開けてみてビックリして、ジョンに助けを求めたんです」と弁明したかと思えば、

「夫は以前にも女性を殺してバラバラにしたことがあるんです。だから、屍体は夫に殺された犠牲者だと思いました」
などとも云い出す始末。彼女の車の中にあった袋詰めのはらわたを指摘されると、

「コインランドリーに行く男を乗せてあげたので、そいつの忘れ物かも知れません」
その場当たり的な嘘の数々は畠山鈴香のそれによく似ている。
結局、殺害自体は認めたが、あくまでも正当防衛だったと主張した。
しかし、それでも鋏で刺しただの、アイロンで殴っただのと供述は転がった。
おいおい、電気スタンドじゃなかったのかよ。
やがて、屍体の指紋を消すために油で炒めていたことが判明し、計画的な犯行であった可能性が濃厚になった。
すると、オマイマは一転して心神喪失を理由に無罪を主張し始めた。

以下は鑑定に当たった精神科医に彼女が語った「事実」である。

 

「夫を解体する際、赤い口紅をつけ、赤い帽子を被り、赤いハイヒールを履きました。血の色に魅了されたのです」

「あばらの肉がおいしそうだったので、バーベキューにして食べました。とても柔らかでジューシーでしたわ」

これもどこまで本当なのか判らない。精神異常を装おうための嘘であった可能性もあるのだ。
陪審員もその辺りを苦慮したのだろう。評決に至るまで6日も費やした。
結果、謀殺は否定されたものの故殺は認められて、オマイマは懲役27年の刑を云い渡されたのであった。

カイロの貧民窟に生まれた彼女は10歳の時に無理矢理されて以来、そのことが露見することに脅えながら暮らした。
彼女が生まれ育った土地では、結婚前に純潔が汚されれば、自分ばかりか家族までもが後ろ指をさされることになるのだ。
だから、19の時にアメリカ人に求婚されると「待ってました」とばかりに承諾した。
この土地から離れられれば誰でもよかったのだ。直ぐに離婚し、新天地で男漁りの日々を送った。
そんな中で彼女の人格は次第に破綻していったのだろう。
夫が暴力的だったことだけは事実のようだ。
彼は左手の薬指が切断されていたのだが、彼女はその理由はこのように説明している。

「いつも帰ってくるなり、ただいまのキスの代わりに薬指を突っ込んできたからなの。それが嫌でたまらなかった。痛かったし、感情も傷つけられたわ。だから、秘部と指を切り落として、あいつの口にくわえさせてやったのよ」

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