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【怖い話】母子水入らずの旅行で泊まった温泉宿

温泉宿にまつわる怖い話
この記事の所要時間: 831

 母と娘が旅行に行った。娘はもうすぐ嫁ぐ身、最後の母子水入らず。ありきたりの温泉宿で特徴は海に面した・・・それだけ。部屋に通されるとやる事がない。

駅から続く温泉街の土産物屋はだいたい覗いて来たし、夕食までにはまだ時間があった。そこで二人はお風呂に行く事にした。

「この先の廊下を行くとあります。今でしたら丁度夕日が綺麗ですよ」

女中さんはそう言って忙しそうに戻って行った。

 

 言われた通りに進むと一本の長い廊下に出た。左右にはバーや土産物屋が並んでいた。そこを通り過ぎて行くと、廊下は右に曲がっていた。

その正面には『男湯』『女湯』の暖簾が。

中から音は聞こえない。ふたりで満喫出来そうだ。

支度を済ませ浴場に入ってみると、案の定誰もいない。

「うわー、素敵ねぇ」

娘は感嘆の声を挙げた。正面は全面開口の窓、窓に沿って長方形の湯船。

その窓の外には夕日に光る一面の海。二人は早速湯船に入った。

 

 娘は湯船の右奥が仕切られているのに気付いた。1メートル四方程の小さなもの。手を入れてみると、飛び上がるほどの熱い湯だった。

「きっと足し湯ようなのね」

母の言葉で娘は途端に興味を失った。 風呂は全く素晴らしいモノだった。

湯加減、見晴らし、なにより二人きりの解放感。窓と浴槽の境目にはちょうど肘を掛けるくらいの幅があった。

母は右に、娘は左に、二人並んでたわいもない話をしていた。

 

 ゆっくりと優しい時間が過ぎて行く。その時、母は突然悪寒を感じた。自分の右の方から冷たいモノが流れて来るのを感じたのだ。普通ではない、なぜかそう直感した。

あの熱い湯船の方から冷たい水が流れてくる等ありえない。それに視線の端に何かがチラついている気がしてならない。急に恐怖感が涌いて来た。

それとなく娘の方を見てみる。母は血の気が引く思いがした。

娘の表情。これまでに見た事のない表情。しかも視線は自分の隣を見ている。口はなにかを言おうとパクパク動いてるが、声は出ない様子。

 

 母は意を決して振り返って見た。確かに誰もいなかったはず。また、後から誰も入って来てはいないはず。が、自分の右隣には見知らぬ女がいた。

しかも自分達と同じ姿勢で肘をついて外を見ている。長い髪が邪魔して表情まではわからない。しかしなにか鼻歌のようなものを呟きながら外を見ている。

「おか、あさん、その人・・・」

娘はようやく声を絞り出した。

「ダメ!」

母は自分にも言い聞かすように声を挙げた。母の声に娘はハッとして口を押さえた。

 

 そう、別の客かも知れない。そうだとしたら、あんな事を言うのはとても失礼な事だ。けど。誰かが入って来たなら気付くはず。ましてや自分達のすぐ近くに来たなら尚更だ。

やっぱりおかしい。そう思って母の方を見ると、さっきの女はいなくなっていた。しかし母に視線を合わすと、今度は洗い場の方を指指している。

そこには。出入口に一番近い所で勢いよく水をかぶるあの女。

何杯も、何杯も、何杯も、水をかぶっている。

娘は鳥肌が立った。正に鬼気迫る光景だった。母の顔色も真っ青になっている。

 

「もう出ようよ」
小さな声で母に呟いた。

「けどもしあれなら、失礼になるんじゃ」
母も気が動転しているようだった。

「それに」
母が続ける。

「私、あの人の後ろ恐くて通れない」
そう言う母は恐怖からなのか、少し笑みを浮かべていた。

 

 母のその一言で娘は気を失いそうになった。自分も同じ、恐くて通れない!

「じゃ、どうするの、助け呼ぶ?」

「だから普通のお客さんだったら・・・」

そう答える母にもわかっていた、あの女は異常だ。

第一あれだけ勢い良く水をかぶってるのに、水の音が聞こえてこない。

「こわいよ、どーするの、ねぇお母さん」
娘は半泣きになっていた。

「とりあえずここで知らんぷりしときましょ」
母はそう言いまた外を見た。私が動揺してたんじゃ・・・自分に言い聞かせながら。

 

 不思議だ、さっきは水の音なんて何一つ聞こえやしなかったのに、背後からはザバーッザバーッと聞こえてくる。娘は気付いてるのだろうか?

問うてみるのも恐ろしく、身を強ばらせるばかり。

その時。突然水をかぶる音が止んだ。娘にも聞こえていたようだ、止んだ瞬間に顔をこちらに向けて自分を呼んでいる。

娘は泣いていた。

けどお互いに顔を見合わせるばかりで、振り返る勇気がない。

ただただ出て行く事を望むばかり。

そのまましばらく時間が過ぎた。

 

 

「出て行ったみたい」

 

 母は娘の方に視線をうつした。娘は静かに下を向いていた。ただ、たまにしゃくりかげるのが聞こえる。

「ほら、もう大丈夫だから、ね、もう出よう」

母の優しい声に諭され、娘はゆっくり顔を上げた。よかった、心の底からそう思い母の方を見た。

母の後ろ。熱い湯の入った小さな湯船。そこにいた。

髪の長いあの女。熱くて入れるはずなんかない湯船の中に。

湯船一杯に自分の髪を浮かべて。顔を鼻から上だけ出して。

娘を見て、ただじーっと見つめて。そしてニヤリと笑った。

 

「ギャー!」

 

 娘は絶叫して母にすがりついた。母は娘が何を見てしまったのか知りたくなかった。寄り添う娘の肌は冷えきってしまっている。

「出よう、おかしいもの。歩けるでしょ」

そう言いながら娘を立たせた。

早く、早く。もどかしくなる。水の中がこんなに歩き辛いなんて。

それでもなんとか湯船をまたいで洗い場に出た。

娘は顔を覆ったままだから足元もおぼつかない。

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