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ぶら下がり男

この記事の所要時間: 335

お姉さん(Oさんで)がどこぞにお勤めしてた時の事。

その日もいつも通り仕事を終え、いつも通りに帰宅した。

当時Oさんは親元で暮らしていた。

普通の一軒家だったとの事。

ところがおかしい。

玄関に着いたのだが、何故か家には入りたくない。

こんな事は初めてだった。

「疲れているのね」

そう思って家に入った。

 

家族と食事を済ませ、風呂にも入った。いつも通りだった。

「もう寝る」

居間でくつろぐみなにそう言い、自分の部屋のある二階へと向かおうとした。

ここでまたおかしな感覚をおぼえる。

上がりたくない、何故かわからぬがそう思った。

けど明日も早いし、家族とテレビを見る気も湧かない。

疲れから来る感覚だと思いそのまま二階へと上がって行った。

Oさんの部屋は二階突き当たりの左側。

なにも変わったとこはない。

が、部屋の前で再び嫌な感覚におそわれた。

さすがにいらぬ事を考えてしまう。

けど家族を呼ぶのも馬鹿らしいし、取り合ってくれないだろう。

意を決してドアを開けた。

窓もベッドもいつも通りだった。

なんだか急に白けてしまい、服を片付けるとそのまま布団に潜ってしまった。

疲れていたのだろう、すぐに眠くなって来た。

 

どれ位寝ていただろう。

Oさんはフッと目を覚ましてしまった。

まだ階下からはテレビの音が聞こえて来る。

少し喉が乾いていたが、気にせず眠ろうとした。

Oさんは、右向きの姿勢で丸くなって寝るクセがあった。

その部屋からすると顔を窓の方に向けて寝ている事になる。

気の性か、どこからかギーシ、ギーシと音が聞こえる。

何かが揺れてきしむような不思議な音。

Oさんはなんだろうと思いながらも気が遠くなっていった。

 

また目が覚めてしまった。

ベッドランプを付けて時間を確かめてみた。

「まだこんな時間」

少し不機嫌になりながらランプを消した。

ギーシ、ギーシ。

何の音?そう思いながらまどろんで行く。

こころなしかさっきより音が大きい気がした。

 

再び目が覚めてしまった。完全にあの音のせいだ。

「まったくなんなのよ」

こんなに何度も目が覚めるのはめずらしい事だった。

ランプを付けて時計を見る。

あれから二時間しか立っていない。

明日も早い、少しでも寝ておきたい。

そう考えてランプを消した。

目をつぶる。

あの音が聞こえる。

なぜか妙に近くから聞こえる気がする。

フッと恐怖感が湧いて来た。部屋の中?

ドアに背を向ける格好で寝ていたOさんの後ろから音がする。

ギーシ、ギーシ、ギーシ。

一定のリズムで聞こえてくる。

ギーシ、ギーシ、ギーシ。

何故か寒気がして来た。

 

Oさんは、自然と震えてしまう自分が恐くなってしまう。

今までこういう経験はした事がなかった。

ギーシ、ギーシ、ギーシ。

それを見透かすかの様にあの音は続く。

ものすごく喉が乾いていた。

「そうだ、下に行けばまだ母さんが起きてるかも」

もう一度ランプを付け時計を見てみる。

夜更かし好きの母なら起きている時間だった。

少し安心する事が出来た。

 

ふと時計の文字盤に何かが映り込んでいるのに気づく。

自分の背後で何かが揺れている。

恐怖が体を突き抜ける。

その時。

 

「オイ」

 

男の声。低い声。自分を呼んでいる。

Oさんは勢いよく振り返った。

 

天井から下がる電気の紐。

そこに男が片手でぶら下がっていた。

下半身が無かった。

片手をメチャクチャに振り回していた。

 

「ギャハハハハハハー」

突然もの凄い形相で笑い出した。

Oさんは気を失ってしまった。

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