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とある国立大学の呪われた研究室

この記事の所要時間: 315

これは私が関東地方のある国立大学で助手をしていたときに実際に経験した話である。

このようなことが続くと、何事もうまくいかないのが世の常であるから、いまは退職して別の仕事に就いている。
思い出すだけでも気が滅入る話を書き記そうと思う。

 

私が勤務していた研究室には、なぜか倉庫としてのみ使用している実験室があった。

国立大学では一研究室当たりの面積が決まっているから、限られたスペースを倉庫として使用するのは変な話である。

教授の話によれば、あの部屋で仕事をした職員、学生に次から次に良くないことが起こる。
先端科学を扱う研究室で何を馬鹿なと思うかもしれないが、あの部屋を実験室にしてから、不吉な出来事が何回も続いていると言う。

 

まず、実験していた大学院生が何事か意味不明のことを叫びながら、あの部屋から飛び降り自殺をした。遺書はなかった。長い間、精神科に通って、投薬治療を受けていたという。

次に、深夜に実験していたまだ若い技官がその部屋で変死した。死ぬ直前に実験ノートに意味不明のことが書き綴られていたと言う。
変死扱いで司法解剖されたが、病死の疑いとのことであった。

それ以来、倉庫のはずのあの部屋で火災報知器が作動したり、無人のはずなのに天井にぶらさがった蛍光灯が揺れていたりといったことがあったそうである。

 

私が着任して、走査トンネル電子顕微鏡という新しい測定装置を導入することになった。スペースが狭いから、設置するのはあの部屋以外に都合できない。
私はオカルトめいたことは信じないたちだったから、気にせずあの部屋に電子顕微鏡を置いて実験することにした。

そして、下についた大学院生に、電子顕微鏡で合成繊維を観察するというテーマを与えて、深夜に実験をやらせていた。
深夜の方がノイズが少なくきれいな像がとれるからである。

 

先端科学の世の中にも妙なことは起こるものである。しばらくして、徹夜明けの大学院生がおびえ切った表情で私のところにやってきた。
なかなかきれいな像がとれないので、いろいろ条件を工夫してやってみた。

そしたら、ある瞬間、きれいな像が画面に写って、それがこの写真だと言う。その写真を見ると、「呪」「死」という字が浮かび上がっているのである。
繊維がたまたま「呪」「死」に見えるように絡まりあったと考えるには、それは余りにもきれいな、誰でも読める「呪」「死」という文字であった。
もう、あの部屋で実験するのは嫌だという。
これ以外にも妙なことを多く体験していると語りだした。誰かに肩をたたかれたので振り向いたら誰もいなかっただとか、ふと居眠りをしたら7階のその部屋の窓を誰かが叩くので目がさめたとか。

 

実験しないわけにはいかないから、何とか実験は続けるように言った。先端科学の研究室である。しかし、その大学院生は研究室に姿をあらわさなくなった。
登校拒否はよくあることであるが、長期におよんだので、彼のアパートに様子を見に行った。

呼びかけても返事はなかったので、管理人に事情を話し、カギを開けてもらった。ドアを開けると、焼き肉の匂いがする。
何でこんな匂いがするのだろうと不思議に思いながら、中まで入って思わず声を上げた。電気コードを裸の上半身に巻きつけ、彼は感電自殺していたのである。

タイマーで通電するようにセットされ、皮膚とコードの接触する部分が焼け焦げていた。焼き肉の匂いはこの焼け焦げた匂いであった。
私ははじめて匂いで吐き気を覚え、嘔吐してしまった。さらに、彼の上半身を見て、顔面蒼白になり、おびえ切った。

 

上半身にはっきりと、みみずばれのように「呪」「死」の文字が浮かび上がっていたのである。

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