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読心術の出来る奴

この記事の所要時間: 127

三年ほど前の夏の話。
友人の部屋で大学の講義をさぼり、何するでもなくダラダラしていた。
他愛も無い馬鹿話、その中で友人がふとこんな事を口にした。

 

「なあ、もしこの世に読心術できる奴がいてさあ、俺が今読心術の出来る奴っているのかなあって考えてる事も読んでるって考えてるのも読んでるのかなあ?」
…人間、暇になると何て非生産的な事を考えるんだとその場は苦笑していたのだが、翌日からそいつが音信不通になった。
落とせないゼミにも顔を出さず、一緒だったバイトも無断欠勤した。携帯も通じない。
そんな事が三日ばかり続き、さすがに何かあったかと部屋を訪ねて行った。

部屋の前まで来ると、中から妙な音が聞こえる。人の歌のような、機械音のような音。
思いきって開けたドアの向こうに彼はいた。カーテンを締め切った真夏の部屋。
その真中で彼は歌っていた。直立で、一点を見たまま声を枯らして。

 

放心している彼を何やかやとなだめすかし、事の次第を聞いた。
私と馬鹿話をした日の夜だったという。寝いりばなに電話が来たのだという。

「あの…」
聞いたことの無い、掠れた女の声だったという。声が小さくてよく聞こえない。

「…ない…よ」
はぁ?

「きょう…だれ…」
どなた?

「…おも…じゃな…」
同じような言葉を二度三度繰り返した後、沈黙が流れた。

気持ち悪くなった彼が受話器をおこうとした時、はっきりとした声で女が言った。

 

「あなたが今日思った事、誰にも言うんじゃないよ」

 

それから三日、何も頭に浮かべないように、歌い続けていたのだという。

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