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赤い服の少女

この記事の所要時間: 36

我が社には仮眠室があります。

田舎の営業所にいた時の事、僕が休みを取ったため、本社から大先輩が応援に来ました。

2・3日して本社で先輩に会ったら変なことを言い出します。

「おい、誰にも言うなよ。」
(霊的な現象を目撃したときの決まり文句です)

「どうしたんですか?」

「この間お前の営業所に行っただろう」

「あーーそういえば有難う御座いました」

「違うんだよ。そうじゃなくて」

大先輩の話は次のような奇怪な話でした。

その営業所の仮眠室は非常に狭く、北側にしか窓がなく、隣のベットとの間がわずか30センチほどしかありません。

真ん中のベッドで寝ていた大先輩でしたが、夜中の3時過ぎ頃、人の気配に気づいてふと目を覚ましました。

右側の北の窓から月明かりが差し込んでいるのですが、自分のすぐそば、その右側のベッドとの間に誰かが立っていたそうです。

それは月明かりにもはっきりと、小柄で赤いドレスを着た小学校5・6年生くらいの少女の後姿が自分のすぐ右側に見えているのです。

その少女は何故か上半身を直角に折り曲げて、隣に寝ていた社員のS君の顔を間近で覗き込んでいるようなのです。

大先輩は総毛が逆立つほどの恐怖に襲われて、思わず声を上げそうになりましたが、全身で堪えて我慢をして、掛け布団をそっとたくし上げて顔を隠し、息の音も聞かれないようにガタガタと震えて心の中で念仏を唱えていたそうです。

どのくらい時間がたったのかわからなくなって、うとうとし始めた頃に外が明るくなり、掛け布団をそっと下げると、そこには少女の姿はなく、S君のあどけない寝顔があったそうです。

その話を聞いて僕は半信半疑でしたが、さらに後日談があり、信じないわけには行かなくなりました。

 

大先輩の横に立っていた赤いドレスの少女の事は、自分と先輩だけで収めて置こうと言う事になり、誰にも話しませんでした。

1週間ほどして、19歳の新人のA君が思いつめた顔で「実は昨夜の事でお話したい事があるんですが」と言うので話を聞くと、A君は驚くべきことを話し始めたのです。

仮眠室は二つあり、新人のA君はいつも大部屋のほうで寝ているんですが、部屋の真ん中の自分のベッドで仮眠中、やはり3時頃人の気配で目が覚めたそうです。

大きな窓から差し込む月明かりの下に

小さな人影が見えました。

体を起こしてよく見ると、赤いドレスのようなものを着た少女がかがんでベッドに寝ている誰かの顔を覗き込んでいます。

A君は恐怖のあまり声も出ず、ゆっくりと体を元に戻して、横向きに反対側を向いて朝までガタガタ震えていたと言うのです。

そこですぐに二人で大部屋に行き、どこのベッドの横にに立っていたか確かめました。

するとそれは驚く事に例のS君のベッドでした。

「昨夜はSはここで仮眠していたのか?」

「はい確かにここに寝ていました」

僕も全身が総毛立ち、その場に立ち竦んでしまいましたが、すぐにS君が心配になりました。

A君に硬く口止めをしてから事務所でS君を呼び、身辺に変わった事はないか?よく寝られるか?家庭ではどうか?体調はどうか?等等色々確かめましたが、S君は「何でそんな事を聞くんですか?変わった事なんかありませんし快調ですよ」と言うばかりでした。

 

結局その話はそれで終わり、同僚や上司に話すこともなく、今まで内緒にしていましたが、大先輩にもS君にもA君にも変わった事など無く、無事今日に至っています。

20年位前の実話です。

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