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決して読まれる事の無い新聞

この記事の所要時間: 159

高校生の頃、朝刊の新聞配達のバイトをしていた時の体験です。

 

午前3半頃に広告を差込み、分担の新聞を自転車に積み込んで配達に向かうのは4時過ぎ。

まだ朝早い時刻なので、家々の雨戸はしまっており、時折聞こえるのは犬の鳴き声だけ。

 

そんな中、あるアパートの2階、暗い廊下の中程、薄らと明かりの点いている部屋があります。

廊下に面している台所の明かりらしく、格子の付いた窓の向こうに鍋や食器洗剤が擦りガラスに、透けて見えました。

早起きの人はいるので、その時は特に気にせずドアに付けられたポストに新聞を入れ、先を急ぎました。

次の日、またその部屋に配達に行くと又、明かりが点いています。

次の日も、またその次の日も。

 

何日かそんな日が続き、ある朝いつもの様に新聞をドアのポストに入れようとすると、入りません。

見ると新聞の他にも郵便物があふれています。

部屋の明かりは今日も窓から漏れています。

 

その時その窓が少し開いているのに気付き、悪いとは思いながらも、中をのぞきました。

すると台所の奥の部屋、おそらく居間と思われる部屋に立っている人の足が見えました。

その場は新聞をドアの前に置き、次の配達場所に向かいました。

 

すると又次の日も新聞が入りません。それどころか配達物を取り込んでいないらしく、部屋の前に散乱していました。

部屋は今日も明かりが点いており、窓も同じように少し開いています。

さすがに妙に思い、又中をのぞくと昨日と同じ様に奥に足がみえます。

向きや位置もまるで昨日と同じに…

その時ある考えが頭をよぎり、1階の大家さんの部屋へ走りました。

 

眠い目を擦り出てきた、初老の大家さんにわけを話し、部屋を見るよう言いました。

 

次の日、その部屋のポストは空になっており、新聞は楽に入りました。

ただポストの上、ドアの正面には喪中の張り紙が貼ってありました。

そうです、私は毎朝首吊り自殺者に、決して読まれる事の無い新聞を配達していたのです。

そして、その朝配達した新聞にはその自殺者の記事がのっていました。

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