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交通事故で蟲になった友人

この記事の所要時間: 21

友人がバイクでこけて大怪我をしたと聞き、慌てて病院に行った。

友人の家族から話を聞くと、相当ひどい事故だったらしく、手術は済んで命に別条は無いものの意識がまだ戻らないとのことだった。

更に全身に骨折があったとのことで、手足を切断しなくてはいけなかったということだった。

私は友人がそれほどショックに強いほうではないことを思いだし、やや不安になった。

友人の家族に促され病室に入った。

彼は呼吸器をつけたままベッドに寝かされ、静かに眠っているようだった。

首まですっぽり毛布がかけられていたが、そのシルエットには在るべき手足が認められなかった。

ベッドの脇の椅子に腰を下ろし、なんとなくその顔を見ていた。

起きたときの彼が取り乱す様を想像し、切なくなった。

 

さすがに一般病棟と違うのか周りは静かだ。

家族の方も入ってくる様子が無く、静けさに任せ、私も彼にどう接すべきなのかを色々シュミレートする。

「なったものはしょうがない…」ちがうな。

「強く生きろよ。アディオス!しゅたっ」ぜんぜん駄目だ。

かける言葉もない。

ふと彼が身動きした。私は彼の顔を反射的に見る。

一瞬、アレ?と不思議に思った。

彼はじっと私の顔を見ていた。

意識が戻ったのだと理解するのに時間がかかった。

言葉を出せない私に彼は口を開いた。

「○○…(私の名前)」

「お、おう…」

「おれさぁ…」

「…」

「蟲になっちゃったよ…」

「え?」

 

彼は私から視線を外さず再び黙り込んだ。

私もかける言葉が見当たらず、沈黙する。

どこまで知っているのだろう。何を言いたいのだろう。

突然彼が聞いたこともないような声で叫ぶ。

「ムシダヨオレハムシナンダヨジベタハイズリマワルムシナンダヨ」

彼は口から黄色い液体を吐き出しのたうちまわる。

毛布が跳ね飛ばされ、呼吸器や点滴が外れ、彼の動きはいっそう激しくなる。

彼の叫びは止まらない。

「ムシダヨオレハムシナンダヨ」

目線だけは外さず、彼はダンゴムシのような触手を蠢かせ続けた。

逃げるように私は病室を出た。

その後彼には連絡をとってない。

彼からも連絡はない。

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