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心がひどく不細工な美人

この記事の所要時間: 151

彼女はとても綺麗な人で、それを自分でも良くわかっていた。

あまりに綺麗だったから、少し自信過剰ぎみで、鏡を見つめると、二時間でも三時間でも、自分の顔を見つめているような人だった。

その日の夜も彼女は、部屋の大きな鏡の前で行ったり来たりしていた。

今日、職場の同僚の女性の葬式があったそうだが、早く自分の美しい顔を見つめたくて、葬式をすっぽかしてしまった。

死んだ同僚の女性は、何年も付き合った男にふられて自殺したらしい。

彼女は憐れに思う傍ら、その女性をあざ笑っていた。

死んだ女性の付き合っていた男を誘惑して、別れるようにしむけたのは彼女なのだ。

『馬鹿な女ね。男一人繋ぎ止めておく魅力も無いなんて。不細工だからいけないのよ。私のように美しくなければ』

彼女は赤い唇をつりあげて、鏡を見つめた。

『あら』

彼女は思わず声をあげた。

一瞬だったが、鏡の中の自分が目をそらしたように見えたのだ。

『おかしいわね』

そんなはずは無いと、鏡をじつと見つめる。

鏡の中の自分は相変わらず美しい顔で、じつとこちらを見ている。

彼女は首をかしげながら、口紅でも引こうと化粧台の方へ手をのばした。

 

『不細工』

突然、低い女の声が、部屋の中に響いた。彼女はぎくりとして顔をあげる。

『不細工』

『不細工』

重なるようにして、女の声がこだまする。

彼女は混乱して、自分の美しい顔を見て落ち着こうと、鏡の方を向いた。

そこには、顔をひどく歪ませて、彼女を睨む死んだ筈の女性の姿が写っていた。

彼女は金切り声をあげると、鏡に向かって持っていた口紅を思い切り投げつけた。

鏡は粉々に割れて、鋭く尖った破片が、彼女の美しい顔めがけて飛んできた。

まるで、鏡の破片が意思を持っているかのように。

避ける間も無く、彼女の顔に、無数の破片が突き刺さった。

彼女の美しい顔は醜く崩れ、もう一生もとの顔に戻る事は無かった。

心がひどく不細工だった彼女は、美しい顔を無くし、本当にただの不細工になってしまった。

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