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あんたも連れてくよと囁いた老婆の患者

この記事の所要時間: 20

知り合いの看護婦に聞いた話。

彼女が勤務していたのは個人病院。ターミナルケアの老人が半数を占める病院だったそうだ。

ある夜、彼女の担当している病室からナースコールがあった。

呼び出ししたのは老婆。痴呆が進み、ほとんど植物人間状態の患者だった。

「どうしたの?おばあちゃん」

彼女は耳元で声をかけた。すると、

「○○さん、あんたも連れてくよ」

その老婆は、瞼をかすかに開けて、静かに呟いたそうだ。

「何?おばあちゃん、何て言ったの?」

彼女は良く聞き取れず、もう一度訊ねた。

すると、老婆はもう一度呟き、完全に眼を閉じたそうだ。

○○さん?彼女は聞き覚えがあった。

老婆の見舞い客の一人に、その名前の中年女性がいたことを思い出した。

 

彼女の危惧していた通り、翌日老婆は亡くなった。

それからしばらくして、ナースルームに老婆の息子夫婦が菓子折りを持ってきた。

案の定、息子の奥さんの名前が○○さんだった。

彼女は病院を去ろうとする奥さんに、老婆の最後の言葉を伝えるべきか迷った。

それは非常識だし、縁起でもないことだったので、結局言えなかったそうだ。

 

一週間ほど過ぎたある日、彼女は救急当番のシフトについていた。

深夜ナースルームで待機していると、コールサインが鳴った。

救急車が到着し、緊急治療室に一人の女性が運ばれてきた。

なんと、あの○○さんだった。

 

彼女は姿を見せない研修医を呼びに、休憩室に走ったそうだ。

「急患です。急いでください」

彼女は休憩室の扉に手をかけて呼びかけた。

そして扉を開けた瞬間、彼女は失神したそうだ。

 

結局警備員に起こされて、彼女は意識を取り戻した。

一時間近く気を失っていたそうだ。

その間、○○さんは心臓疾患で亡くなった。

新人の看護婦と研修医の医療処置がどうだったのか分からない。

ただ、彼女は自分のミスだったと感じたそうだ。

研修医も待機中に寝入ってしまったと言っていたらしいのだが、彼女にだけは真実を告白した。

実は金縛りにあっていた、と。

さて、彼女が見たものは何だったのか。

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