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砂浜に落ちていた女性物のカツラ

 2015.04.28     恐怖体験談     コメントを書く     Loadingお気に入りに追加
この記事の所要時間: 456

祖父の七回忌だったと思う。

実家は海に近い田舎町。近くには漁港があり、潮の流れが速くて海水浴はできなかったが、景色のいい砂浜もあった。

さて、法事は朝から坊さんが来て始まり、午後は親戚一同で酒を飲みながらの食事になった。

大人たちは盛り上がっていたが、僕はすぐに退屈した。

それで、年の近いいとこと2人、海の方へ散歩することにした。

母親には夕方家に帰るから、遅くならないうちに戻るよう言われた。

 

僕らは砂浜をぶらぶら歩くのにすぐ退屈して、漂着した木片とボールを使ってバッティングをやり出した。

小学六年生のいとこが海を背にしてボールを投げ、僕がそれを打った。

ボールは波が押し返すのだが、当たりがよくて沖に流されたりもした。

砂浜に落ちているボールにも限りがあって、それを探すのも一苦労だった。

2人してボールになりそうなものを探していると、いとこが僕のことを呼んだ。

変なもの見つけたと言う。

 

それは女性物のカツラだった。

 

いとこはそれを手にとり、笑いながら振り回したり、足で蹴ったりした。

やめろよ、気持ち悪いから。それよりボール探そうぜ。

僕は相手にしなかった。

すると従兄弟はふざけて、そのカツラをかぶってみせた。

ちょっと気味が悪かった。

その幼い顔つきが、カツラのせいでなんだか急に大人びて見えた。

 

いい加減にしろ。もう帰るよ。

海は夕日でオレンジ色に照り返していた。

波の音が大きくなったような気がした。

この時の胸騒ぎが、後に的中することになった。

 

祖母の家に戻ると、何人かの親戚はすでに帰っていた。

うちも母親が車を運転するので、その日のうちに帰る予定だった。

従兄弟の家族は一泊するとのこと。

僕は母親にせかされ、仏壇に手を合わせた。

なぜか従兄弟も後についた。

それからちょっとして、僕は先に車に乗り込んだ。

カーラジオを聞いていると、母親がやってきた。

あんた、○○くんと何か食べたの?

さっき突然気分が悪くなって、吐いちゃったのよ。

 

そこから大変だった。

母親とおばさん夫婦は車で従兄弟を病院に連れて行った。

僕は何があったか聞かれたのだが、見当もつかない。

その様子を傍で見ていた近所のおばあさんが、何事か祖母と話している。

不安が募っていた。従兄弟は真っ青になり、ガタガタと震えていたし、大人たちはアレルギーショックについて深刻そうに話していた。

その時だった。

 

仏壇の前の花瓶が前触れも無く倒れた。

その場に居合わせた全員が驚いた。

「実は、…」

僕は喉まで出かかっていた言葉を口にした。

砂浜に落ちていたカツラのことだ。

大人の男性は眉をしかめたが、近所のおばあさんや他の女性は熱心に聞いていた。

そのカツラを今すぐお寺に持って行った方がいいと言ったのは、そのおばあさんだった。

 

おばあさんが電話すると、ちょっとヤンキーぽい若者二人がやって来た。

高校生の孫と彼の友人だった。

事情を聞くと、砂浜まで一緒に行ってくれるとのこと。

日は暮れてすでに暗かった。

原付とバイクに乗って、僕らは砂浜へ向かった。

港の灯台が微かに見えるだけで、辺りは真っ暗だった。

バイクを止めて松林を通り抜ける途中、その高校生達は話し始めた。

どうやら一年近く前、浜に死体が流れ着いたらしい。

身元不明、多分国籍も不明、救命具を付けた上半身だけだったという。

下半身はフカや魚に食べられ、顔の肉もほとんどなかったらしい。

「あれは男だから、そのカツラは関係ないだろう」

としゃべっていた。

僕は激しく後悔した。逃げ帰りたかった。

懐中電燈を持つ手は震え、集中してカツラを探す余裕はなかった。

 

「ここらへんだと思う」

本当は暗くて全然分からなかった。

二人は探索に熱中して、あまり怖がっていないみたいだった。

僕は彼らについて歩きながら、背後が気になってしょうがない。

「おい、これじゃねえのか?」

友人の方がカツラを見つけた。

発泡スチロールやビニールなどの合間に、それは転がっていた。

まるで干からびた海藻のように見えた。

安堵して早く戻ろうと急ぎ足になった時だ。

突然、海の方から悲鳴のようなものが聞こえた。

三人驚いて振り返ると、月明かりの下、波打ち際に真っ暗な人影があった。

二百メートルくらい先に立っていて、手招いているように見える。

僕らは声を上げて走り出した。

バイクを止めた道路わきまで来て、おばあさんの孫が言った。

「やばかったな。ありゃ幽霊だったよ」

片方の高校生が腕をさすりながら答える。

「鳥肌立ってる。…近寄ったら海に引きずり込まれてたな」

 

おばあさんの指示に従い、僕らはカツラをあるお寺に持っていった。

そみには親戚のおばさん、祖母、あのおばあさんは待機していた。

すぐに住職が仏壇にカツラを供え、読経を始めた。

同じ頃、従兄弟は緊急治療室にいて、チアノーゼ?みたいな症状を起こし、体温が危険な状態まで落ちていたそうだ。

 

結局、真夜中になって従兄弟の病状は回復した。

後日、祖母から伝え聞いた住職の話では、浮かばれない無縁仏の霊が、一族の賑やかな法事に嫉妬したのだろう、ということだった。

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