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ハタオリという地名の深い淵にまつわる恐ろしい言い伝え

この記事の所要時間: 437

あれは俺が10歳の頃だっただろうか…

お盆で凄く暑かった。福井って雪国のイメージがあるが夏は半端じゃなく暑い。

おじさんが奥さんと一緒に遊びに来てて…暑いからってんで川に泳ぎに行こうってなってハタオリって淵に泳ぎにいった。

昼でも薄ぐらーい所で(まあ淵ってのはそういう場所の事を指してるから当たり前なんだけども)夏でも水温は驚くほど冷たいでもまたそれが気持ちいい。

水の色(川の色って言ったほうがいいのかも)なんかも深ーい緑で…昔の人は淵には主が住むっていってそんな感じ…

何かが潜んでいそうな雰囲気…

 

その淵には言い伝えがあって…(おじいちゃんからきいたんだけど)

昔、機(ハタ)を織る事を生業としていた娘がいてとても綺麗な娘で評判だった。

それでお殿様がめかけにしようとしたんだけど…その娘そんなの嫌だって言って、お殿様怒ってその娘に無実の罪をきせて生きたまま川の底に沈めてその上から大きな岩を乗っけて殺してしまった…

それからというもの夜な夜なその岩の下からハタを織る音と共に女の声がヒヒヒ…とかギャアァァァ…とか…

さぞかし無念だったんだろう…

その娘が機織りを生業にしてたからだからハタオリって地名になったんだって。

深い淵の真中辺りに大きな岩が顔を出してるその下でまだ機を織り続けているんだって。

もちろん言い伝えだからそんな話信じちゃいなかった…

 

 

俺とおじさんと奥さんと兄ちゃんの4人でいったんだけど、河原で西瓜割したり釣りしたりいわくつきの岩の上から川にダイブしたりして…

楽しい時間ってのは本当にすぐ過ぎちゃうもんで、夕方になってヒグラシがカナカナカナ…って鳴き始めてきた。

この頃になるともう水の中は寒くて…楽しかったねもう帰ろうかって事になった。

おじさんと兄ちゃんはちょっとした荷物を崖の上に止めてある車に手分けして運びにいった。

俺と奥さんはゴミを落としてないかチェックしてた…

崖といってもほんの5メートル位の高さだからおじさんと兄ちゃんが往復して帰ってくるまで5分位のもんだったか…

その間に起こったあの出来事……

 

ゴミ拾いしてた俺はもう大体終わりかなと思って奥さんに声かけようとして奥さんに目をやったんだけど、顔が真っ青なんだぶるぶる震えてる…んである一箇所をじっと見てるあの岩の方…

なんだろうって俺もそっちを見たんだ。

薄暗い川から何か出てる。黒いペッタリした物…人間の頭!?

髪の長い女が水で濡れた髪の毛をペターってさせて頭半分だけ水面にだして向こうを見てる!!

その下にあるはずの体は…無い…おいおいなんだよこれ~
やばいやばいやばい見つかったらやばい!!

俺はそーっと奥さんの近くにいくと手で
「静かに逃げよう」
と合図をしようと思い、肩をポンと叩いた。

「キャッ!!」

極度の緊張状態にあった奥さんは、俺の不用意な行動で思わず声をあげてしまった。

しまった!!
と思った瞬間ぐりんっ!!って頭がこっちをむいた。

思い出すだけで吐き気がして頭痛がしてくるあの顔…

 

どす黒い肌、ぱんぱんに膨れあがっている…皮膚が所々めくれている…

目だけが真っ赤に充血してカッと見開いてるその目がギョロっと動いて俺達の方を向いた…

ニターっとその女は笑うと、スーっと生首が宙に浮いた…

所々はげた頭で長い髪の毛はちりちりで水に濡れて垂れ下がっている。

「みつけた…うらの代わりんなっとぉけの(私の代わりになってよぉ)…」

そう言った恨めしそうなしゃがれた低い声…

「ぎゃあぁぁぁ…」

奥さんが悲鳴をあげる。

「うわあぁぁぁん…」

オイラは泣き叫ぶ。

女の生首はヒヒヒヒヒと笑いながらゆっくり近づいてくる…

奥さんの近くまで来ると物凄い形相になりカーっと口をひらいたお歯黒とどす黒い血で真っ黒な口…

 

「にげてー!!」

俺がそう叫ぶと奥さんはハッとして踵を返した…が…

ブリッと音を立てて生首は奥さんの腕にかぶりついた。

「あああぁぁぁ!!ぎゃああぁぁぁ!!うおうおうおーーー!!」

奥さんはあらん限りの悲鳴を上げている。生首はニタニタ笑いながら腕に喰らいついて離れない。

俺はフーっと意識が遠ざかっていく、遠のいていく意識の片隅でおじさんと兄ちゃんの叫び声を聞いた…

 

俺が気づいた時は、家の座敷で布団に寝かされていた…

おじさんは奥さんを連れて病院に行っていた。兄ちゃんは青白い顔で震えていた…

あの後、どうなったか聞いたけど教えてくれなかった。

奥さんは即入院。

数日後、見舞いに行ったけど、左手に包帯を巻き
「来ないで…」
とか
「何みてるのよ…」
とか呟いていた。

精神に異常をきたした奥さんは数年後首吊り自殺してしまった。

遺書とかは無かった…

 

一度4人で霊感の強いという方(親父の知り合い)にみてもらったのだが、あまりこの事は他人に喋らない方が良いと言われた。

でも、もう辛いから誰かに喋りたかったもう嫌だ疲れた…

あの女が今でも時々見てる…なに笑ってるんだよ…

誰でもいい誰かのところに行ってしまって欲しい。

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