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心霊スポットの企画ページを作るためお化け屋敷を取材した時のこと

 2015.05.13     恐怖体験談     コメントを書く     Loadingお気に入りに追加
この記事の所要時間: 66

二十五歳の夏、勤めていた編集プロダクションをクビになり、幡ヶ谷のアパートで悶々としていた。

なにしろクーラーがないので暑くて暑くて、なおさら苛ついた。

その編集プロダクションをクビになったときの話をします。長文お付き合い願います。

この編集プロダクションという会社(仕事)は大手出版社から依頼を請ければ、なんでもやる。

本、雑誌、企画物のページ。内容に至ってはファッションからプロレス、グルメなど幅広くやる。

ある月刊誌から
「これから暑くなるし、そろそろ」
ということで心霊スポットの企画8ページが回ってきた。

私もそのうちの2ページをうけもった。

雑誌を作る側に居た分、このテの話の大部分が「やらせ」だということも知っていたし、自分なりには「テキトーにウソでも書いとけばいいか」程度の気持ちだった。

 

幸い実家が横浜だったので心霊スポットには事欠かない。

有名なところだとKトンネルとか、廃墟病院とか昔よく行った。

ただ、出尽くしている。そこで、自分が卒業した中学の裏にお化け屋敷があったのを思い出した。

「じゃあ、あれにするか」
と、取材を兼ねて実家へと帰ることにした。

このお化け屋敷、当時雑誌でも何回か取り上げられたことがあり、学校周辺ではちょっと有名だった。

住んでいた一家が惨殺され、その後、庭で女性の首吊り死体が発見されるなど、取材対象としてはなかなかの代物だ。

私の通ったH中学校のグラウンドから50メートル位登ったところにあり、体育の時間に
「鎌を持った人が見ていた」
とか、下校時に廃屋を覗いたら
「白い着物の女が正座していた」
とか話題に事欠かない。

ただ、首吊りは知っていたが、一家惨殺は本当かどうか定かではなかった。

 

 

私は幽霊を全く信じていないが、中学高校と同じ学校に行った同級生のYは自称霊感があるらしく、昔、肝試しに行ったときここで幽霊を見た。

「あそこに何かいるよな、いるよな」
と廃屋の2階の窓を指差し同意を求められたが、私には何も見えなかった。

Yはその後グラウンドまで降りてきてうずくまった。

彼曰く
「ねじれた白い人影が、窓から出たり入ったりしている」
と真っ青になって震えていた。

そこでYには悪いが、協力してもらい、彼のインタビューを交えたお手軽記事を書くことにした。

自宅からYに電話をすると、予想に反して簡単に承諾を得られた。

夜9時にファミレスで待合わせをし、小一時間昔話をした。

「卒業してから10年、こんな形でH中学校を訪れるとは思わなかった」
と苦笑いのY、以外とサバサバしていた。

今考えるとこの辺りから変になりだしたのだが、車に乗り込むとYは妙なことを言い出した。

「今日行くのやめないか」

「何で」
と私は聞き返した。

「いや、なんとなく…。それにもうあそこ何にもないよ」

「はぁ?早く言ってよ」

「だって、何にもないから俺が行くんじゃねーか」

私がやっていた雑誌取材は比較的こういうことが多かった。

「しょうがないとりあえず行って、有る事無い事書くしかないか」

 

H中の校舎脇に車を横付けすると、懐中電灯と小さい一眼レフを持って廃屋に向かった。移動中Yは無言だった。

廃屋はYの言う通り跡形も無く、その周辺は深く掘り返えされて大きな穴が空いていた。

その深さは10メートル位あり、工事用の吊り橋が掛かっていた。

Yは私より少し下がった場所から黙ってその橋を見ていた。

Yの様子が気になったが、仕事だけ済まそうと三脚を用意した。

周辺でシャッターを切りながら、Yに声をかけた。

「具合でも悪くなったか?」

「あのさ…」

「なに」

Yは話し出した。

「さっきここに乗ってきた車、誰の?」

「会社のだけど、なんで」

「いや、後で話す。それからあの橋には、近づかないでな…」

とYは言った。

その顔は真っ青だった。

 

Yは突然座り込んで、震えだした。

そして
「吊り橋の方で誰か呼んでないか」
とつぶやいた。

「やめろよ」
とちょっと怖くなり、辺りを見回した。橋の上には誰もいない。

さすがに気味が悪いので、わたろうとは思わなかったが、写真を撮っておこうと近づいた。やっぱり誰もいない。

ところが、撮影位置を考えていたら、なぜか橋に一歩踏み入ってしまった。

後悔した。その瞬間、急に空気が冷たくなり、にもかかわらず汗が吹きだし始めた。

なぜか解らないが、とにかく橋の下だけは見ないで置こうと思った。

が、私の目の前、ちょうど吊り橋の真中くらいに、なにか得体の知れないものが座っているのに気が付いた。

「女がいる…」

女はこっちをジーッとみていた。

体の自由は効くのだが、吊り橋の上で動けなくなってしまった。

 

そのとき
「戻って行い」
とYが大声を出した。

私はこの声で我に還り、Yの方を振り向き愕然とした。座り込んでいるYの背後に女がいる。

女は白い着物をきていて、Yの顔を見下ろすようににして立っていた。

Yはそれに気付いていない様子で、私は恐怖で全身の毛がさかだった。

とにかく逃げることを考え、吊り橋から地面へとピョンと飛び移った。

その瞬間吊り橋のワイヤーがビーンという音とともに切れた。

もしあのまま橋の上にいたら、おそらく転落していただろう。

私はもう恐怖で分けが解らなくなり、ただひたすら車まで走った。Yには悪かったが見捨てて走ってきてしまった。

 

後ろから
「うわああああ」
と雄叫びをあげながらYが追いかけて来た。

その声でまた恐怖がこみ上げてきて、ひたすら走った。

私はYと汗だくで車に乗り込むと、直ぐに車を発進させた。

そして学校から道路に出たところで2トントラックと正面衝突した。

幸い二人ともケガは無かったが、会社から借りてきた車は全損だった。

 

 

翌日会社には出勤したが、さすがに原稿は書く気になれず、他の人に書いてもらった。

二日後に車を全損させたせいで、社長にクビを通告された。

しばらく東京で仕事を探したが貯金も底をつき、実家に帰ることにした。

これと前後して不思議なことがあった。

当時携帯が出始めた頃で、充電が切れているにも関わらず、呼び出しが鳴った。

直感的にYじゃないかと思い、コンビニからY宅に電話を入れた。

Yの母親が出て、おとといから連絡がつかないとのこと。

その後、これに関係してか否かわからないが、四ヶ月後に彼の田舎、山梨で無事見つかる。

翌日、幡ヶ谷のアパートを引き払い、実家に帰るとデスクから連絡が入った。

「お前のフィルムに変なものが写っているのだが」
とのこと。

内容は確認しなかったが
「写真はそっちで始末してください」
そそくさと電話を切った。

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