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兄カップルの失踪事件と親父の車

この記事の所要時間: 157

22年前の話。

当時、俺の兄は近所に住むYという女性と付き合っていた。
Yは明るくて真面目で、なにより美人だったので、不真面目な兄(誠実ではあったが)とは釣り合わないなぁ、と正直思っていた。

…しかし、どうもYの家は借金を抱えていたらしく、両親は兄とYの結婚を厳しく反対した。
兄は何度も両親に、Yとの結婚を認めてくれるよう頼んだが、両親が折れることはなかった。

腹に据えかねた兄は、Yと一緒に、父親の車を使って失踪してしまった。

当時はそれなりに騒がれたが、何年経っても兄とYは一向に現れることなく、やがて俺もそんな事件は忘れようとしていた…。

 

 

そして10年が過ぎた。
その日はちょうど仕事が早く終わったので、俺は意気揚々と鼻歌を歌いながら家路についた。

すると、俺の家の前に白い車が止めてある。
窓ガラスが黒っぽいのでよくは見えないが、どうも誰か乗っているようだ。

人の家の前に止めてんじゃねえ、と思いながら白い車をジロリと睨むと車のドアに、斜めになった雷マークのような傷が付いていることに、ふと気付いた。

あの傷は……!!

俺は一瞬、目を疑った。あれは、俺がガキの頃、ドアを開こうとしてガードレールにぶつけて付いた傷だ…、そうだ、これは親父の車だ!!

まさか、兄貴が帰ってきたのか!?

俺は、勢いよく車のドアを開けて…、そして、悲鳴を上げた。

車の中にいたのは……、兄とYの白骨死体だった。

「う、うわぁあああああ!!」

俺は自分でも滑稽なほどの悲鳴をあげながら、思いっきり車のドアを叩きつけるようにして閉じた。

その衝撃で、理科室の骨格模型をそのまま座席に置いたようなポーズで座っていた兄とYの白骨死体が、がらがらと崩れた。

俺は再度悲鳴をあげ、地面にしりもちを着いた。あまりに唐突な事態に、頭の中が真っ白だった。

何をしていいかわからず、俺は親父の車を、震えながらただじっと凝視していた。
そして……。数十分も経った頃。俺は、ある事実に気付いた。

兄とYの失踪事件から、もう十年も経っている。
なのに…。それなのに。

俺の目の前にある親父の車は、あの時のまま。十年前のままだったのだ。

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