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生前の彼女を忘れられない先輩の留守番電話

この記事の所要時間: 30

私の身に起きた不思議な話を聞いて下さい。

大学の先輩の事なのですが、付き合っていた彼女が交通事故にあった。

即死だったそうです。

後日、傷心している先輩を励ますつもりもあり、先輩のアパートに遊びに行ったのです。

今だガックリと肩を落す先輩はポツリと、

「俺がバイトじゃなかったら…留守にしていなきゃ」

と、留守番電話の再生ボタンを押した。

『もしもし、今からそっちに行くね』

電話から再生されたのは生前の彼女の明るい声。

「これが、彼女の最後の声なんだ…俺の部屋に来る途中に…俺さえ電話に出ていれば、迎えにいけば、もしかしたら…」

「たとえ先輩が部屋にいても、何も変わらなかったかもしれないじゃないですか。やっぱ彼女は…」

私は口をつぐんだ。

何を言っても、今の先輩には慰めの言葉が見つからなかったから。

 

一月後、想いを振払う様に先輩はアパートからの引越しを決めました。

私は、先輩の引越しの手伝いにいったのです。

手際の悪い私達は、アパートの荷造りが一段落する頃には、日も傾きかけていました。

「悪いな、お前に荷造りまでさせてしまって」

「いいんですよ、もうすぐ片付きますね」

と、その時、部屋の片隅に置かれていた留守番電話から、

『もしもし、今からそっちに行くね』

…かっ、彼女の声、まさか…

ギョとした私ですが、今だ彼女を忘れられない先輩はボイスメモリを消さずに、何かの拍子に再生されただけだ、と自分を納得させたのです。

しかし、何もこんな時にタイミングが悪いと思い先輩に目をやると。

「悪い…」

「エッ」

「悪いな、今日はありがと、もういいよ、帰ってくれないか…」

「帰ってって、トラックも借りてきてるし、今日中に出なくちゃまずいじゃないですか」

「いや、俺は、もうちょっと、ここに残るから、あとは大丈夫だから」

ただならぬ先輩の気配に、ただ従うしかなく、私は部屋を出ました。

 

その日以来、先輩が行方不明になったのです。

アパートの部屋は、あの時の荷造り途中のままで。

私は、あの時帰ってしまった自分を後悔しました。

時が経ったとはいえ、傷心しきった先輩は自殺したかもしれないじゃないか…

先輩の御両親も警察に捜索願いを出し、私は、警察に出向き、あの日の事を事細かく説明をしました。

記憶をたどりながら。

と、一つの何気ない行動の記憶が蘇り、私は全身が鳥肌立つったのです。

 

あの時、引越しの荷造りをする時、私は早々に留守番電話の回線だけ残し電源コードはコンセントから抜いた…

電話が掛かりこそすれ、留守番電話が再生されるはずがないじゃないか…

『もしもし、今からそっちに行くね』

あの時の彼女の声は、留守番電話の再生音なんかじゃなかった。

なぜ気が付かなかった。

そして、先輩は知っていたんだ、あの時、彼女からのメッセージである事を…

 

私は警察には、そんな事は言えませんでした。

私を帰した後、じっと彼女を待っていた先輩。

彼女は来たのか…彼女は先輩を連れていったのか…どこへ

 

これが、私の経験した不思議な話です。

この事を思い出すにつれ、恐さより寂しさを想います。

先輩と彼女は幸せに一緒にいるのでしょう…どこかで…

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