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当たり屋という商売

この記事の所要時間: 118

叔父に聞いた話。

今はどうか知らないが、昔は当たり屋という商売があった。

自分で車にぶつかっておいて運転手に因縁をつけ、慰謝料や口止め両をふんだくるというヤクザな生業だ。

 

叔父が小学生のころ、自転車ごと車にはねられたことがあった。

幸いたいした怪我もなかったのだが、運転手が車から降りてくると、突然見知らぬオッサンが横から現れて

「おい、俺のガキになんてことしてくれたんや」

と運転手に迫った。

叔父が怖さと痛さで泣いていると、オッサンは金銭を要求しだした。

もめた末、オッサンが運転手をどつくと運転手は悲鳴をあげて車に乗り込み、あっという間に逃げてしまった。

 

オッサンは

「済まんかったな坊主」

といって慰めてくれた。

叔父はなんとなくこの人は当たり屋だと分かったという。

それを聞いてみると、

「俺はな、むかし無茶しすぎていま体ボロボロや。首は何度もやったし、肋骨も一本ないんやで」

そう言って胸を触らせてくれた。

その時、異様な胸の冷たさに叔父はぞっとしたという。

「それにな、心臓もないんや」

無理やり触らされると、そこも冷たくて確かに鼓動はなかった。

「じゃあ、俺あの運転手追いかけるわ」

そう言うと、オッサンは叔父を残して去っていった。

 

 

あれは、この世のものではなかった…と口癖のように言う。

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