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写真部を辞めていく先輩達が写真の中に見たもの

この記事の所要時間: 39

ある少年が高校に入学しました。彼はカメラが趣味だったので、入学してすぐに写真部に入部しました。

その写真部には何人かの先輩がおり、活動も活発でしたが、なぜか3年生の数は極端に少なく、1,2年生を中心としたクラブでした。

そこは県下でも有数の進学校だったため、きっと大学受験のために早く引退するのだろうと、彼は何となく思っていました。

先輩たちは皆優しく、また親切に指導してくれたので、彼はめきめきと上達していきました。

特に懇意にしてくれたのはA先輩で、よく一緒に撮影に行っては、少年を指導し、色々と面倒を見てくれたので、兄弟のいない少年はA先輩を実の兄のように慕っていました。

 

 

ある時、A先輩は地元のフォトコンテストに応募し、その作品が優秀賞に選ばれました。

少年はそれを自分のことのように喜び、また自慢に思いました。

A先輩もとても喜んでいました。

でもそれからしばらくすると、A先輩はなんとなくクラブを休みがちになり、ある時からぱったりと来なくなってしまいました。

おかしいなと思っていた頃、A先輩がしばらくぶりに部室に顔を出しました。

手には退部届をもっていました。

少年はたまらない気持ちになり、A先輩にまた一緒に撮影に行こうと言いました。

でもA先輩は悲しそうな目で少年を見て、

「そのうちおまえにもわかるよ。」

と言い残して、部室を後にしました。

少年はきっとA先輩は写真で結果を残せたので、早めに受験勉強を始めたのだろうと思いました。

 

 

A先輩がいなくなったあとも、少年は毎日写真を撮り続け、彼はさらに上達していきました。

1年が過ぎた頃には、彼も色々なコンテストで入賞するようになっていました。

 

ある時、少年は暗室で作業をしていました。

それはコンテスト用に応募する、モデルを使ったポートレート写真でした。

そのモデルの背景に窓があり、そこに3歳ぐらいの女の子が写っていました。

女の子は黄色い傘をさしていました。

「こんな目立つ傘が写ってると写真が台無しだあ」

と思い、彼はその写真をゴミ箱に捨てました。

 

次に少年は、交差点の写真を撮りました。人や車でごった返す都会の交差点。

暗室でその写真を現像していると、彼はビルの間に開く、黄色い傘が目にとまりました。

雨が降っているわけでもないのに一つだけ開いた傘は、人混みに中でとても目立ちました。

 

次に彼は、風景写真を撮りました。手前に湖があり、その奥に白雪を背負った山々が見えています。

暗室の定着液に浮かぶその写真の中で、彼は湖にボートが浮かんでいるのを見つけました。

小さなボートなので、撮る時に気がつかなかったようです。

ボートの上には、あの黄色い傘をさした少女が、こちらを向いて座っていました。

 

少年は何かぞっとするものを感じ、急いで他の写真を現像しました。

街角の猫、オートバイ、公園の桜、夏の砂浜。

彼が撮ったすべての写真の片隅に、必ず、その少女は写っていました。黄色い傘をさして。

 

少年はもしやと思い、A先輩が撮った最後のアルバムを開きました。

思った通り、そこには、あの少女が黄色い傘をさして写っていました。

今とまったく変わらない姿で。こちらを向いて。

 

そして彼は、先輩たちが上達したとたんにクラブを辞めていく、本当の理由を悟ったのでした。

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