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捨て置かれた墓標がある集落と因縁の家系

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ある山村のはずれにある墓地には、維新の頃の昔から、捨て置かれた墓標が数多く存在する。

人の移動が極端に少ない片田舎の共同体では、何代も続いた家ばかりが軒を並べているのだが、これらの墓標は現代の村の構成員の苗字とは明らかに異なる家のものばかりだという。

実はこれらの墓標は、昔、村内で水争いがあった時に、争いに負けて皆殺しにされた家のものなのである。

 

山奥の村では、水田は山の傾斜地に拓かれているが、とくに降雨の少ない年は、山の上の方に位置する上の集落と、下の方に位置する下の集落の間で、水争いが発生する。

経済的に恵まれた上の集落の住人たちが、水門を閉めて自分たちの田の水を確保するのだが、それでは生活できない下の集落の住人たちは、夜陰に乗じて自分たちの田に水を落す。

こうしたことが繰り返されているうちに、業を煮やした上の集落の人々は、よってたかって下の集落の連中に危害を加え、酷いときにはほぼ集落ごと殺してしまったそうである。

 

こういう村には因縁めいた話が絶えない。

たとえば上の集落の子孫は、偶然かもしれないが水に祟られることが多い。

S君の家系はそんな因縁のある上の集落の子孫だったが、現在は東京で生活している。

彼の姉は小さい頃、海水浴場で水死しているし、叔父は借金苦から海に飛び込んで溺死している。

なにもわざわざ入水自殺を選ばなくともいいと思うが…

 

S君自身もその話は知っており、あまり水辺に近づくことのないよう注意していたが、学生の時、家でタバコを吸っていて火事を出してしまった。

それだけなら水難ではなく火難だが、S君は顔面にひどい火傷を負い、大きな水ぶくれができてしまった。

端整だったS君の容貌には、醜い火傷の跡が残ったのである。

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