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深夜残業中に訪問して来た姿の見えぬ取引先

この記事の所要時間: 437

残業規制厳しい折、電灯は自分の席のみに限定され、結構広い事務室は私の席を残して後は全部真っ暗の状況。

商店街の一角の会社とはいえ、23時を過ぎますとあたりは人通りもすっかり途絶え、けっこー不気味なんです。

そんな時、向こうの奥の課の電話がなったんです!

「よりによってこんな時間になんだ?やっかいなことに巻き込まれたらやだな。ただでさえ終電に間に合わなくなるかもしれないのに…」
と思って取りませんでしたが…

延々5分くらいでしょうか?いや10分くらいかもしれません。

鳴り止まないんです!

 

だんだんそのしつこさに腹が立ち始めた私は席を立ちとうとう電話にでました。

すると結構明るいっていうか、はぁはぁ息せききった声で
「す…すいません!こんな時間に!お約束の見積書を今からお持ちしたいんですが!」
と若い男性の声。

私は
「いやぁこんな時間ですから、もうここは誰もいませんよ。明日にして頂けますか?」
と怒りを押さえながら断りました。

…が相手は
「申しわけりません!ですが、実は予定が大幅に狂ってしまってこんな時間になりましたが、実は最寄の駅に今ついたところなんです。あすは別件でお伺いできないのでなんとか受け取るだけでも!御願いします!」
と言って食い下がってきたんです。

 

私は
「いや困ります。私も今もう帰るところですから、明日にして下さい。担当がいないときに持ってきてもらっても困ります!」
と再度かなり強く断ったのですが、電話がそのとき切れてしまいました。

「失礼な奴だな」

腹が立ちましたが、やむを得ません。駅から会社までは交通の便が悪く歩いて15分くらいです。

私は席に戻りました。

ですが、15分たってもその男性は会社にくる気配がありません。

時計はもう23時に30分を回ろうとしています。

「あれからもう30分経ったぞ?なにやってんだ!」

イライラは絶頂に達しつつありました。

そのときです。また部屋の奥で電話がなりました。

 

 

電話をとりますと、さっきの男の声です。

やっぱり同じように
「すいません!路に迷ってしまって!もう少しですから…すいません!」
と弱々しく謝るんです。

「もう終電がなくなりますので、本当に困るんですよ!」
と言ったんですが、

「すいません」
と言いながらまた電話が切れたんです。

事務所はビルの4階なんですが、窓の外をみると人通りは全くありません。

すると、また電話です。

「今すぐ近くに来ました!保安の方に話して私を中に入れていただく様御願いします!」
と言ってまた切れました。

もう一度外をみましたが、やはり誰も玄関には人の気配はありませんでした。

ようやく私もだんだん不気味になってきました。

保安に電話をしましたが、当然誰も尋ねてきていないとのこと。

「イタズラか?」
と疑念を抱きながらも私個人への執拗なイタズラとすれば、なおのこと不気味です。

 

すると、また電話です。

「今すぐ近くに来ました!保安の方に話して私を中に入れていただく様御願いします!」
と言ってまた切れました。

もう一度外をみましたが、やはり誰も玄関には人の気配はありませんでした。

 

また電話が来ました。もう私は真っ暗な奥の課の席にへばりつきです。

「ありがとうございます。今、中に入れて頂きました!エレベーターで今あがります!」

また切れました。

もう、このときは向こうは妙に快活な口調で一方的に喋って切ってしまいすので、こちらからは何もいえません。

「おいおいおい」

…私は事務室の真っ暗な入り口を凝視しました。

通常は事務室の中に外部の人間を入れないために、入り口のところに簡易電話を置いてあってそこから、担当者に電話してもらうのです。

 

もうこの段階でイタズラということは確信していたのですが、それにしては電話の口調はあくまでも「誠実で」「快活」な若手サラリーマンのそれでしたので、一方で妙にねっとりとした不気味さが高まっておりました。

また電話がかかってきました。

「今つきました!お待たせしてすいません。今、受付におります」

相手は、はぁはぁ言っています。実に誠実そうで、申しわけなさそうな口調です。

「あんたね!何時だと思ってんだ!」

私が怒鳴りますと、急に沈黙が流れました。

「………」

後は一通り罵ったのですが・・・

「……」

ここから先は沈黙です。

私は再度部屋の奥の真っ暗な入り口を凝視しました。

何か人の気配がするようで。しかし、当然誰もいません。

相手は沈黙です。

「……」

私は今度はこちらから電話を切りました。

 

すると、今度はすぐまた電話がかかってきました。

私はもう終電がなくなるので、電話には出ませんでした。

しかし、電話は鳴り続けます。私が部屋を出るまで鳴り続けていました。

会社を出た途端、全身に鳥肌が立ちました。

「あの執拗なイタズラはなんだろう。俺、狙われてるのか?それとも?????」

 

これマジの話です。幽霊にしても誠実すぎると思いますが・・・

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