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ご臨終だと一目でわかる光景

この記事の所要時間: 117

昔、付き合っていた彼女と夏の夜道を歩いていたら、突然「アッ」と言って立ち止まり、かたわらの家の生け垣を気にしている様子。

「どーした、何かあったか?」と聞いても、「ウーン」とか言ってまともに答えない。

すると、その生け垣のある家から、突然何人かの女のしぼり出すような泣き声がした。

「えっ?」と思って生け垣の隙間から中を覗くと、庭の向こうに木造平屋の古い家が見え、縁側に面したガラス戸が開け放たれていて、畳の部屋に布団が敷かれ、その周りを5~6人の男女が囲んでいる。

一人、背広を着た男が布団の中の老人らしき男の腕をつかみ、首を振っている。

ああ、ご臨終だ…と一目でわかる光景だった。

すると、オレの肩越しに家を覗いていた彼女が、突然オレのTシャツの裾をつかんで、逃げようとする。

マジで怖がっている。

「どうした?」と尋ねると、しゃにむに走り出した。

オレも何となく気味が悪くなり、彼女の後を追った。

 

その家から、かなり遠くまで走り、駅前の繁華街に近くなったあたりで、やっと彼女は立ち止まった。

涙目でオレに言うことには、「死んだ老人の霊みたいなものが、自分の死体を見下ろすように立ち上がり、すうっと宙に浮かんだ。そして、ゆっくりと私の方へ顔を向け、にんまり笑った…」という。

目と目があったその老人の目が、黒目だけだったそうだ。

そりゃ、逃げるわな…

ちなみに、オレは何も見えませんでした。

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