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人に化けて悪さをする山の木霊コダマ

この記事の所要時間: 210

昔、山で仕事をしてた時のこと。

仕事を終えて作業道を歩いて下っていたら、上の方で妙な声がした。

「ホゥ」とか「ウォ」みたいに聞こえるんだけど、呼ぶ時にそんな声(山でよく通る声)を出す人もいるから、誰かいるのかな?と思って上を見たら、尾根の方に小さな人影が見えた。

逆光でシルエットしか見えないんだけど、こっちを見てる様子。

俺も
「オオゥ」
みたいな声で答えたんだけど、じっと動かない。

…と思ったら、こっちに手を振ってジャンプし始めた。

ワケわからんし、こっちも疲れてたから
「降りるぞー」
って、そのまま林道へ降りた。

 

先に降りてたおっさんが
「誰かいたのか?」
と聞くので説明すると、ちょっと嫌な顔をした。

「コダマかも知れん」
と言う。

「何それ?」
と問うと

「人に化けて悪さをする」

「昔は、コダマを見たらその日は家に帰って、一歩も外へ出るなって言われてた」

「夜中に呼ばれたり、戸を叩かれても絶対返事をしてはいけない」

「今はそんなことないかもしれないが…」

おっさんは、ひとしきりそんなことを言った後…

「念のため、今晩はお前も外へ出ない方がいいぞ」

 

俺はその頃、駅近くの飲み屋へ毎晩のように通っていたけれど、やっぱり気になって、その夜はおとなしく家に居た。

が、別に名前を呼ばれたり、戸を叩かれたりはしなかった。

 

 

次の日の朝、仕事の続きをしに作業道の入口までくると、おっさんが先に来ていた。

いつもは先に来てさっさと足拵えを済まし、火を焚いて待っているのに、なぜか軽トラの中でタバコを吸っている。

俺が近づくと降りてきて、作業道の入口を指差した。

ウサギ2匹と鹿の死体が重なって置かれていた。

内臓が抜かれている。一目見て吐きそうになった。

「今日は山へ入らない方がいい」

そう言われたが、俺も仕事をする気にならなかったので、これ幸いと引き返した。

 

その後も、その山の仕事を続ける気にならなかったので、おっさんに頼み込んで他の仕事師に代わってもらった。

おかげで年末にかけて金が足らなくなり、飲み屋に行く回数も減ったけれど、おっさんから代わりの仕事師が大けがをしたという話を聞いて本気でゾッとした。

何かに気をとられていて、倒れてくる木の下敷きになったらしい。

もしかして「コダマ」に呼ばれたのか?

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