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人間は何にだってなれると真顔で言ってきた将校の真意

この記事の所要時間: 255

時は1944年、11歳になるP君はポーランドに住んでいた。

当時は、ナチに占領されていた事もあって、生活は苦しかったらしい。

無論、P君の家はユダヤ人ではなかったが、まともな食事を食べられる余裕すらなかった。

P君の家は、ユダヤ人収容所が近く、村にはドイツ兵であふれていたそうだ。

 

ある日、P君が配達の仕事を終え「親の仕事の手伝い」家へ帰る途中の事。

ユダヤ人収容所がある森の付近の道を、自転車で走っていると、前からドイツ軍の車が走ってきた。

P君は、即座に自転車からおりて端によった。

しかし車は通り過ぎず、P君の前で止まり中からドイツの将校がおりてきた。

しばらくその将校は、P君の顔を見つめてしきりに頷いていたらしい。

ふいに、その将校はニッコリとほほ笑みながらポケットからチョコを差し出した。

P君は受け取って「ありがとう」と言った。

 

将校曰く「これから毎日この時間に、私の話相手になってくれたらその分だけチョコをあげよう」とほほ笑みながらいったそうだ。

P君は頷き「わかりました!」と言った。

その次の日からP君は毎日仕事帰りに、森の端道でまっている将校に会った。

将校はその都度チョコを渡し、P君は歩きながらチョコを食べ、その日あった出来事などを話した「何を話していたかは忘れたらしい」。

将校は自分からは話をせず、終始ほほ笑みを絶やさず頷くだけであったという。

そんな日が続いたある日、いつも待っている将校がいなかった。

 

P君はチョコも食べたいし、何よりも好奇心で森の中にある「将校から聴いた」収容所へと向かった。

「近づいてはならない」と将校から言われたが、好奇心が勝ったらしい。

森を歩いているとなにかが腐ったような匂いがする。

森を抜ける途中、それはあった。

大きな穴。沢山の死体。

P君は叫び声一つ上げず、ただ震えながら見ていた。

その時、後ろからドイツ兵に肩を捕まれ、そのまま収容所の将校の部屋に連れていかれた。

どのくらい歩いたか、収容所内をどう行ったかまったく覚えていないらしい。

 

部屋に入ると、大きな机に将校は座っていた。後ろの壁には大きなヒトラーの肖像画。

P君は、今になって震えが止まらず、将校をちらちら見ていた。

将校は、相変わらずほほ笑みを絶やさず「そこに座りなさい」と言い、P君が座るとチョコを差し出した。

そして、「さあ、食べなさい。」と言った。

P君は、もう食べるどころではなかったそうだ。

P君は「なぜ、あんなことをするんですか?」みたいな事を言ったらしい。

すると、将校の笑みが急に消え、P君の肩に手を乗せてゆっくりこう言ったそうだ。

「あれを見たのかい?」

一回頷いて、顔を近付けて

 

「人間はね…何にだってなれるんだ。さあ食べなさい。」

 

P君は、この時泣きながらチョコを無理矢理食べたそうだ。

その後、ドイツ軍の車で家まで送ってもらい、以後部屋の中にとじこもっていたそうだ。

自転車は兄が取りにいったそうだ。

P君とは、私の嫁「ポーランド人」の爺さん。

爺さんは、一昨年他界した。

ドイツ将校の名前は不明。

戦後、どうなったかもわからないそうだ。

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