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嗤う雛人形嫌いになった理由

この記事の所要時間: 139

私が幼稚園のころのことです。

うちは2人姉妹でしたが、家にあった雛人形は段飾りの立派なものではなく、ガラスケースにちんまりとおさまった雛人形セットでした。

ひな祭りの頃になるとケースごと居間に飾られ、時期が過ぎると棚の上に置かれる程度のものでした。

それでも一応、お雛様・お内裏様・3人官女が揃っており、箪笥や牛車、造花の桜と橘、木でできた菱餅や小さな道具類が並べられていました。

糸のような目におちょぼ口。見ようによっては笑っているようにも見えますが、全体的にはむしろ無表情なものでした。

私は雛人形には興味もあまりなく、ただミニチュアのようなお飾りだけを愛でていました。

 

ある夜中、私はトイレに起き出しました。

トイレは、居間を横切った向こうにあります。

つまり、行くときにはケースに背を向けていましたが、戻るときに丁度ケースの中身が見えたのでした。

 

薄暗い居間のケースの中で、雛人形がいっせいに、音もなく首を左右に振って笑っていました。

糸のような目はそのままでしたが、おちょぼ口はニンマリと左右にのび、なんともいえない邪気を発しているようでした。

私は転げるように部屋に戻り、布団をかぶって震えて夜を明かしました。

その後は特に怪異もなかったのですが、その時以来私はひどい人形嫌いになってしまいました。

その人形は、いまだに実家に飾ってあります。

雛人形の首がはたして左右に揺れるものかどうか、たぶんしっかりねじ込まれていて揺らすことなんか不可能なんだろう、とは思うのですが、手にとって確かめる勇気は30年たった今でもありません。

嗤うとは?
嗤うというのは好意的な態度ではなく、嘲笑う意味で使われる。

表現するならば、笑うは「ハハハハ」、嗤うは目がトンでしまった状態で「グヒャヒャヒャヒャヒャ」と言う感じである。

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