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座敷童子伝説そのものだった友人の家の栄枯盛衰

この記事の所要時間: 316

中学時代の友人の家が、所謂「出る」家でした。

彼の家に遊びに行くと、誰もいないはずの部屋から足音が聞こえたり、本棚からいきなり本が音を立てて落ちて来たり、台所の蛇口が誰も触らないのにひねられたり、と云うのは私も体験しました。

その他にも、妹(結構萌えな美人)の部屋のサッシがいきなり音を立てて閉まったり、階段を上り下りする音が一晩中続いたりした事もあったそうです。

今思うと気味が悪いのは、気が弱い私は彼の家で怖い目に遭う度、
「もう2度とヤツの家には遊びに行かない!」
と心に誓うのですが、なぜか誘われると、またノコノコと彼の家の門をくぐってしまうのです。

決して、妹さん目当てでノコノコと訪れてしまうわけではないのですが(汗)

 

 

ある時、また怪奇現象が起こりました。

2階にある彼の部屋にいたのですが、またはっきりと、トントントン…
と誰かが上って来る足音が聞こえました。

その直後、隣の和室の襖がスーっと開く音が聞こえます。

そして、まるで、帚で畳を掃くようなサッサッサッ…と云う音。

5分間ぐらい続いたでしょうか、やがてまた襖の開く音、階段を降りる音。

その時は4人でマンガを読んでいたのですが、別の友人に「今の聞いたか?」と訪ねると、彼も蒼い顔をしてうなずきました。

 

それにしても、その家に住んでいる友人は怖くないのかと不思議に思い、ある時尋ねてみると「怖くない」と答えました。

慣れた、と云うのもあるかも知れないが、その「ユーレイ」に、なんだか親近感みたいなものを感じると言います。家族全員そうだそうです。

私は、彼の家に棲んでいる何者かは、座敷童子ではないのかと冗談半分で考える様になりました。

帚で部屋を掃除したり、イタズラはするが、住人に愛情を持たれている。

だから、彼の家はあんなに裕福で、幸せそうなんだ…。

彼との交友は高校生まで続きましたが、大学生になってからはお互いのライフスタイルが違ってしまった事もあり、疎遠になりました。

最後に会ったのは彼の結婚パーティでした。

酔った私は彼に、
「おまえんち、まだ出るの?ザシキワラシ」
と聞いてみました。

ずっと気になっていたのです。

すると彼は、
「ああ、それがさ。最近、出ないんだよ。ホント、最近になって。」
と、不思議そうに答えました。

 

それから4、5年も経った時でしょうか。

私も結婚して、実家から電車で2時間程の土地で暮らしていましたが、お盆で帰った時に偶然別の同級生に会いました。

やあやあ、と云う感じで近くの居酒屋に入り、旧交を暖める事にしました。

彼はずっと地元で暮らしていて同級生の消息に詳しく、あいつはもう3人の子持ちだ、あいつは…等いろいろ教えてくれるのです。

私は、
「ザシキワラシは?あいつ、長男だからまだあの家に住んでるんじゃないのか?」
と、尋ねてみました。

するとそいつは、意外だ、と言わんばかりの顔をして、
「なんだ、お前、知らなかったのか?彼の家、破産して夜逃げしたんだよ…」

なんでも、彼は大学卒業後、父親の経営する会社に勤めていたそうですが、結婚前後(つまり座敷童子がいなくなった頃)から今まで順調だった父親の会社が、何故かみるみるうちに業績が落ち、あっと云う間に倒産したそうです。

私が憧れた素晴らしい家庭は崩壊し、それぞれ落ち延びていったそうです。

 

遠野物語の中で語られる座敷童子は、その家が傾く時、姿を消したそうですが、まるで彼の家に現れた怪異は、遠野物語の座敷童子伝説そのものです。

では、本当に彼の家に居たのは、ザシキワラシだったのでしょうか?

私が今もって不思議に思う体験でした。

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