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首から上が無い自分の影と海の中まで続く道

この記事の所要時間: 231

「ちょっと暇だし自転車で海まで行こうかな~。」
と思った俺は、自転車に乗って川の土手の所を海の方に向かって走っていた。

海までは、だいたい一時間程で着く。

その日は真夏日で気温が高く、雲一つない青空に太陽がギラギラと輝いていた。

しばらく走っていると、急に自分の影が目についた。

自転車をこいでいる自分の影だ。

太陽の日差しを背に受けているので、影は俺の前にできていた。

影を見ていると妙な事に気がついた。その自分の影には、首から上が無かった。

「え?なに?どういうこと?コレ?」
と思った瞬間、すごい恐怖がこみ上げてきた。

真夏日だというのに、体がガタガタ震え始めた。

自転車を止めようとしたが止められなかった。というか、「自転車を止めるな。」という信号が、直接体に送られてきて止めることができなかった。

「止めようとするのに体がそれを拒否する。」といった感じだった。

土手には、俺の他には誰一人いなかった。いつもなら、ジョギングしている人や他にも自転車をこいでいる人がいるのだが。

土手から川の反対側に降りると道路があるのだけど、車も一台も通っていなかった。蝉の鳴き声と俺が自転車をこぐ音しかしていなかった。

どれくらい時間が経ったのだろうか、前方に海が見えてきた。しかし、自転車を止めることはできない。

 

このままでは海に突っ込んでしまう。

やばいと思った俺は、頭の中で必死に南無妙法蓮華経を唱えていた。

すると、今まで気づかなかったのだが、背後に人の気配を感じた。

その瞬間、なぜか俺の体から恐怖が消えて体が動かせるようになった。

自転車を止めると、海が目の前にあった。あとちょっと進んでいたら海に落ちていただろう。

驚いてその場に呆然としていると、後ろから自転車のベルが。

かなり驚いて身をかわすと、自転車に乗った中年の男がすごい表情でこちらを睨みつけたまま海に沈んでいった。

沈んでいったというか、道が海の中に続いているかのようにスーッと海の中に入っていった。

時計を見ると、まだ家を出た時刻から二十分ぐらいしか経っていなかった。

どんなに急いでも、家から海まで四十分はかかる。

わけが分からなくなった俺は、とりあえず近くに住む友人に連絡して車で家に送ってもらった。

 

車の中で友人に話を聞くと数ヶ月前、酔っ払った男が自転車で海に落ちて亡くなったらしい。

死体は発見するのに結構時間がかかったため腐食していたらしく、引き上げのときに頭が
「ボトッ」
と落ちたそうだ。

その人が、あの男と同一人物かどうかはわかない。

ただ、あの男の表情は怒りや恨みとかじゃなくて、生きている俺に対する嫉妬の表情だった。

というか、
「死体には頭がなかったのに、俺が見た男にはなんでちゃんと頭が付いていたのだろうか?」
と思った。

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