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家の中に鳴り響く兵隊の足音

この記事の所要時間: 218

私の母が子供だった頃の話です。

母親は中国で生まれ、戦況が悪くなると同時に兄姉共々両親に連れられ命からがら日本に帰国しました。

帰国後に住んだ家は、一時期軍隊の寮として貸し出しされたこともあった平屋建ての比較的大きな家でした。

 

戦争が終わり、弟と妹も生まれ、貧しいながらも楽しく生活をしていたある晩のことです。

ほぼ年子に近い兄弟5人で大喧嘩になり、母親は1人玄関に1人寝ることになりました。
(母親も経緯の詳細は覚えていません)

大きな家だったので、玄関も間口が広く(開き戸4枚分)、玄関を上がった所に右(東)は茶の間、左(西)は応接室に続く細めの廊下があります。

玄関の正面には同様の廊下がまっすぐ北側伸び、奥にある汲み取り式トイレにつながっています。

距離にして5メートル程あったかも知れません。

母親は頭を東に向け、布団を敷いて眠ったそうです。

夜中、かすかに聞こえる足音で目を覚ましました。

 

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…

 

家の周囲に玉砂利を引いていたので、最初、母親は家の周りを誰かが歩いていると思ったそうです。

ところが、段々大きくなって来ます。

 

ザッザッザッザッザッザッザッザッ…

 

「いっ、家の中から聞こえる!!!!」
と思った瞬間、体中が何かに抑えられ動けなくなりました。

音は、相変わらず大きく近づいて来ます。

怖い、怖いと思いながら、好奇心を抑えられず、音のする方(北側)を目だけ動かしてみると、軍帽を目深に被った兵隊が横一列になって母親に向かって歩いて来るのが見えました。

表情は皆無表情、兵隊の深緑(黄土色?)の軍服を通して奥のトイレの扉がかすかに見えたそうです。

兵隊達は足音高らかに、恐怖の余り目をつぶることも出来ず、硬直している母親のすぐ隣まで迫って来ました。

「踏まれる!!!」
と思った瞬間、母親の身体の上で兵隊達が消えていきます。

母親の身体の真上に、見えない壁が垂直に立っているかの様に踏み出しては、消えていきます。

母親は兵隊にまたがれた時の彼らの足、軍靴のくたびれた感じやゲートルの僅かな”ほつれ”等をハッキリ見たそうです。

その行進は母親がついウトウトし、再びハッと気が付いてもまだ続いており、結局、母親は朝方まで眠れなかったそうです。

 

その後、二度と現れることはありませんでした。

かつて、その家に滞在し不幸にも戦場で無くなった兵隊達…という話もありません。

原因は未だに謎のまま、数年前にその家も取り壊されました

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